リュックとも同行二人…熊井トンネル

  歩きへんろ関係の本を読むといずれも装備品のグレードはケチるな、リュックの中身は必要最小限にして軽くせよと書いてある。中には『ボールペン1本でも減らせ』と強調する本まであるくらいだ。 歩きへんろは一気に回る場合、ぼくらの年齢だと結願まで45日から50日ほどかかる。この間、参拝用具や着替え、旅の必需品を毎日自分で背負って歩かなければならない。2日や3日なら少々重くても耐えられるが、2カ月近くも背負い続けるとなるとダメージが蓄積され、遂には途中で不本意なギブアップということに陥るというのだ。

 そこまでの実感はないもののトレーニング中の経験から想像はついた。衣類は下着からズボン、上着まで山の専門メーカーの軽くて丈夫、夜洗濯すれば朝までには乾く速乾性のものを揃えるのが鉄則のようだ。そうやって着替えを減らし重量を下げるということ。

 確かに合理的だが、問題は値段。専門メーカーのものはやっぱり値が張るのである。根っからの貧乏性で何とか安いもので代用できないかと思い、トレーニングの初期にはディスカウント店を回って使えそうなものを買ってきてはテストしてみたが、本番には難しいと知らされるばかり。 

 それでも懲りずにあれならどうか、これならいけるんじゃないと、次第にグレードを上げつつ、最終的にはやっぱり専門メーカーのしっかりしたものじゃないとダメという結論。典型的な安物買いの銭失い。回り道した分だけ余計に高くついてしまった。

 通気性はあるが撥水性も高く、そのうえ実に軽い素材、ゴアテックスを使った雨具は必需品だ。通常3万円を超えるが、これは前年度の型落ち品とバーゲン品で二人分そろえ、ちょっと賢い買い方ができた。

 カメラは仕事用の一眼レフはもってのほか。手持ちのコンパクトカメラは重量200グラム以上ある。これでは重い。110グラムのものを新たに買った。

 その後もあれがいる、これがいるという中で1点1点重量を調べ、表示にない場合はわざわざ店員さんに量ってもらった。多分ヘンな客と思われたに違いないが、こっちは1グラムでも軽くしたいと必死だった。

 誤算だったのはインターネットで調べ取り寄せた遍路用品セット。パソコンの画面上で見る限りどの店も似たりよったりで大差はなく、重量表示がなかったこともあって、気に留めなかったのが大きな間違い。あれほど少しでも軽いものをと注意していたのに迂闊だった。白衣や菅笠はともかくとして、厚手のビニール製の頭陀袋そのものが想像以上に重く、これに線香・ろうそく・納札・経本・数珠・納経帳の参拝用品全部を入れて量ると1キロを超えていた。

 二人分取り寄せたものの結局中身は一人分を二人で共用することで軽減し、女房は頭陀袋をやめて手持ちの布製バッグを使うことになった。送られてきた納経帳はB5判。これも現地で数カ寺を経てから半分のB6判があることを知ったが後の祭りだった。

 暮れに必需品をリュックに仮詰めした時は、ぼくのものは5キロで収まっていたのでトレーニングもそれに合わせたのに、出発2日前に詰めたら何と7・5キロもある。これに飲み物を加えたら8キロにもなってしまう。女房も6キロと大幅に重い。こんなはずでは……訳がわからない。

 それからが大変だった。充電器の重い電気髭剃はあきらめ、軽い手動の替え刃式を新たに買い求め、大人用では重いからとわざわざ買ってきた子供用バスタオルを外し、予備も含め2本用意した山用ズボンは軽い方1本を着たきり雀にすることに変更。靴下も1足分減らし、悪戦苦闘。

 どう考えてもこれ以上は無理というところで、ぼくは飲み物抜きで6キロ止まり。女房も4・8キロまでしか減らせなかった。二人ともトレーニング中の想定重量を1キロも超えてしまったが、これを背負い切るしかないと覚悟を決めざるを得なかった。

 ぼくらのリュック総重量がまずまずの線だと知ったのは本番に入り暫くたってからだった。

                                                                                                                                                      (西田久光)