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江戸時代後期から幕末にかけて数多の優秀な人材を世に送り出した津藩の藩校「有造館」。その教えを現代に生かそうとアスト津を運営する第3セクター「㈱津駅前都市開発」と津藩士の子孫たちによる「藤堂藩五日会」が共催で来月から『有造館ゼミナール』を開く。同会の会員だけでなく大学教授などが月2回ペースで講義を行っていくが2月18日にはその開幕を作家・童門冬二氏による特別講義で飾る。
「有造館」は苦しい藩財政の再建に努めた名君として知られる津藩10代・藤堂高兌が文政3年(1820年)に開校。江戸後期から幕末にかけて文武に優れた優秀な人材を輩出し続け、その名を天下に轟かせた。3代督学・斎藤拙堂の時代には海外の知識が集積していた長崎へと学生を積極的に送り、当時の最先端知識である蘭学や西洋医学を学ばせている。その成果を体現する存在といえるのが、日本水路測量の父と呼ばれる柳楢悦や、坂本龍馬を撮影した上野撮影局を開いた上野彦馬と共に日本写真術の黎明期を築いた堀江鍬次郎らである。
津城の一角にあった有造館は現在、お城公園=津市丸之内=に正門だった「入徳門」=市指定史跡=を残すのみとなったが、文教都市を掲げる津市のルーツとして今もなお、影響を与えている存在といえる。
今回、アスト津を運営する第3セクターでは「㈱津駅前都市開発」が津藩士の子孫らによる「藤堂藩五日会」と共に「有造館ゼミナール」を開講。温故知新の精神を下に、同会会長で斎藤拙堂の子孫である斎藤正和さんと初代督学・津坂東陽の子孫である同会員の津坂治男さんを始め、大学教授や文化行政に携わる人たちを講師に迎え津市の文化風土や、当時の学びの中心であった経書や史書について学ぶ。そしてそこから学んだ貴重な知識を現代社会に生きる我々の人生の貴重な教訓として役立てるのが目的。
津駅前都市開発では昨年より映画を軸とした事業を展開し、ビルの新たな付加価値を見出しながら、津駅前で競争が激化するテナント誘致や地域活性化に繋げる戦略を打ち出しており、今回もその一環としての要素も持っている。また、将来的には交通アクセスの良さを生かした社会人向けの大学や大学院のサテライトの誘致などにも繋げる意欲を見せており、その足がかりともいえる第一歩だ。
ゼミナールの内容は2月~7月を第1部とし、テーマは「藩校の歴史・文学からの学び」。月2回開講。1講座2時間(第2・第4金曜日の14時半~16時半)で計10回。会場はアスト津のホテルグリーンパーク1階のレストラン・ルベール。開講を祝し、2月18日14時~、今に通ずる歴史上の人物の教えや生き様などをテーマに執筆や講演活動を続ける作家・童門冬二氏を招き、特別講義を開催する(無料)。その後は斎藤さんと津坂さんを中心に大学教授らを交えながら多彩な視点からの講義を行う。講義後にも座談会を開き参加者同士が活発に意見を交わしながら交流も広げる。7月以降も東京学芸大学や皇學館大学の教授や作家を講師に迎え、様々な講義を展開していく予定。
斎藤さんは「このゼミナールは単なる講義ではなく自己研修の場。平日午後からの開催なので中高年が中心となると思うが、そこから子や孫に広がり、やがて社会を変えていく場としたい」と話している。
激動の幕末と同じく時代が大きく揺れ動いている現代を生き抜くヒントを藩校の教えを紐解きながら、学ぶこのゼミナール。斎藤さんの言葉通り、社会を変える第一歩は、まずその資本となる人づくり。数々の英才を世に送り出した藩校の名を冠するにふさわしい存在へと成長していくことが期待されている。
特別講義は参加無料だが事前申し込みが必要。ゼミナールは10回一括申し込みで参加費5000円。どちらも参加申し込みの締切は1月末まで。講座の詳細は文末の表を参照。
申し込み&問い合わせは㈱津駅前都市開発℡059・222・4122。
2013年1月10日 AM 5:00
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