私は15年前に紙幣を50兆円ほど増刷して、景気対策を一気に、お年寄りが住みよい福祉型の都市再開発、若者が田舎に定着出来る田園都市開発、狭い日本の都市間を時速300㎞で走れて国土を3倍有効利用できる日本縦断超高速道路の建設、またリニアを北海道から沖縄まで敷設させることで、スピードアップによるコスト削減等を提案しましたら、当時、毎日新聞だけが掲載してくれました。
 その後、アメリカのポール・クルーグマン博士も紙幣増刷を日本に提案しました。博士は数年前ノーベル経済学賞を受賞しました。博士は、日本の要請で経済会議に出席しましたが、大蔵省と日銀による金融と財政の主導権争いばかりで、何も成果が出なかったと報告しています。
 要するにインフレ目標を計画して、それに向って金融と財政が一体となって緩和の方向に向えばよいのです。インフレは6%以上になれば警戒すればよく、何を根拠にすぐハイパーインフレと言っているのか見当が付きません。
 経済の自然な流れそのものが、シュムペーター理論に拠るように、デフレとインフレが交互に緩やかな波動のように来るのが理想ですから、デフレだけがよくて、インフレは危険と言うのは論外です。現在のデフレスパイラルこそ危険状態であり、早くインフレに修正する必要があります。
 幸い安倍総理も同意見なので、千載一遇のチャンスと言えるでしょう。仮に狂乱物価になったところで、インフレ退治は日本のお家芸であり、田中角栄の狂乱物価を、首相に請われて就任した福田赳夫・大蔵大臣は金融と財政の引き締めにより、見事に半年で鎮めました。このことは当時のサッチャー首相をして、感服させたものです。
 ところが、その後、橋本龍太郎総理の緊縮予算、三重野総裁の金融引き締め、その弟子の尾鷲出身の速水優日銀総裁の金融引き締めにより、日本経済の息の根を止めてしまったのです。 そして、積極経済論の経済学者は刑事事件等で姿をマスコミから消してしまっています。
 ここで、何と速水総裁は成長率2%で、円安になるとして早々と金利を引き上げ、好景気を肌で感じてないのに、折角の景気を潰してしまった。今回も日銀は速水総裁と同様に2%なら容認としていますが、私は5%は必要であり、そうでないと所得は前の状態に戻らないと思います。
 円が暴落するとか、ハイパーインフレは暴論で、現在は超円高で産業の空洞化が極端に進み、コストダウンも極限に来ている状況なのに、円安ではなく、円適正平衡価格120円までは極安であるから、安保条約にからめた包括的交渉とするボルカー長官以来、アメリカのドル安対策に協力する円高にも限度がある。  現在の円高は通貨に関税がかけられている非常に自由市場に違反した米国の不当な要請といわなければなりません。環太平洋自由貿易圏構想も米国はすすめていますが、貿易の関税を撤廃しても、円の関税を撤廃しなければ、アジア通貨はドルに連動しているので円高の作為的価格そのままでTPP交渉は危険です。 
 岸信介や佐藤栄作のように、米国を説得させるだけの度量が日本の総理に必要となってきました。そのときに日本の経済の危機突破になると確信しています。 万が一、安倍総理の円安インフレ政策にマスコミが批判したり、安倍降ろしがあれば、米国、財務省、検察庁のいつもの連携による日本潰しの津波が日本経済に襲来してきたと考えなければなりません。
 岸首相の安保騒動は、沖縄の地位向上による改定は米国に都合が悪いので、米国の情報機関が、日本のマスコミを使って国民を扇動して、改定を潰そうとしました。しかし、岸首相は命を張って頑張ったので、弟の佐藤総理の時に沖縄返還が実現したのです。
 このことは外務省国際情報局長の孫崎亨氏が「戦後史の正体」で著している通りであります。我々はマスコミに動かされる人間になってはなりません。むしろマスコミや日本を動かす主権ある行動を賢明に取らなければならない。それが危機突破の条件と考えます。
(藪内 憲雄 コーガッケン・高等学術研究所代表)