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南海トラフを震源地とした巨大地震発生時、津市内でも津波で津駅周辺に浸水の可能性があり、多数の帰宅困難者発生が予想されているが大きなビルの非常用発電機は地下に設置されている場合が多く電源の確保が大きな課題となる。そんな中、「アスト津」=津市羽所町=では水没の心配のない同ビル4階に新たな非常用発電機を設置し、周辺住民と共に帰宅困難者の受け入れも行う避難所としての機能強化を進めている。
オフィスビルやホテルといった大きな建物の非常用発電機は設置スペースの都合もあるため、現状では地下にある場合が多い。しかし、昨年に発表された内閣府の有識者会議の南海トラフ大地震の被害想定によると津駅周辺は1~2mの浸水が予想されており、非常用発電源が・切り札・として機能しない可能性が現実問題として浮上している。
ショッピングモールやコミュニティ施設の利用者、オフィスビルで就労する人たちなど毎日多数の人が利用するアスト津でもご多分に漏れず、平成13年の竣工時に設置された非常用発電機は地下1階にある。同ビル4階にある橋北公民館が周辺住民約900名の避難場所に指定されていることからも、アスト津管理組合では危機感を募らせていた。加えて、JR・近鉄・伊勢鉄道・三重交通のバスといった交通網の集積地であり災害が発生する時間によっては多数の帰宅困難者が出ることが予想されており、その明確な避難場所の整備も急務となっている。
そこで先月にあった同組合の臨時総会で新たな非常用発電機の設置を決定。4階(地上約20m)にディーゼル発電機を設置した。
大きさは全長約1・4m・幅65・×高さ90・とかなりコンパクト。備蓄する予定量の軽油で72時間以上の稼動ができ、昼間の照明などを工夫すれば、更に1日伸ばすことも可能。設置業者は大成有楽不動産⑭=本社・東京都=で設置にかかった費用は約690万円。通常の非常用電源と比較すると大掛かりな工事の必要が無く、低コストで設置できるのが大きな特長だ。
これに伴い、避難所として開放する3・4・5階へ誘導するために階段やエスカレーター(非常時には階段として活用)付近に防災用蛍光灯ダウンライト30個や移動式照明器具20台を、更に情報収集に必要となる防災用TVアンテナとTV3台を設置。毛布・簡易トイレなどの備蓄も進めており、7階と12階にある中間水槽や高架水槽も飲料用としての活用を検討中。水槽の内容量に左右されるが3日間、4000人以上の飲料水を供給できる容量を持っており、公共性の強い同ビルが地域貢献を目的に周辺住民と共に帰宅困難者を受け入れる準備を進めている。4月5日深夜にはビル内の電源を落とし、新たしい発電機の試運転も行ったが順調に稼動した。
また、アスト津管理組合では帰宅困難者の発生に備え、津市との協議・連携を進めており、帰宅困難者への対応についての協定締結も検討している。
同管理組合では「まずはテナントの方々が安心して働いて頂ける環境を整えた。そして、地域への貢献。新しい発電機は現実的な価格で設置できるので、周囲のビルも導入して頂ければ一丸となって非常時に備えられる」と話す。これに対し、津市の酒井英夫危機管理部長も「非常時の電源の確保と帰宅困難者への対策は大きなテーマ。アストが対策を進めて頂くことで、周囲にもお願いし易くなる」と期待する。
津市は現在、津波避難ビルの認定や駅前にオフィスがある企業に帰宅困難者となる従業員用の物資の備蓄を要請しているが、今回の取り組みはそれに一歩先んじたものといえる。今後、周辺への波及効果も含め、非常に大きな意義を持つ一歩となることは確実だ。
2013年4月11日 AM 5:00