寝付きが悪く寝起きが悪い。そんな状況がもう十数年続いている。若い頃は、床に入って一分後には寝入っていた。どうして、眠れなくなったのだろう。
 だから、毎朝、目覚まし時計なしでは起きられない。突然のジリリリリに、毎朝びっくりして飛び起きる。若い頃の目覚まし時計には、いくら寝ても眠いのを起こされたが、 今は寝足りないのを起こされる。ジリリリリがうらめしい。
 ところが先夜、眠くなって寝入り、自然に目が覚めた朝があった。うつらうつらのうちに、次第に頭がクリアになり、周囲の音が入ってきた。自然な目覚めとはこういうものだったのだ。幸福感と表現してもよいと思った。
 どこで読んだか忘れてしまったが、睡眠の質は家計状態や夫婦関係よりも日々の幸福感に影響を与えるという論文が科学誌に掲載されたという。お金がなくても、夫婦仲が悪くても、ぐっすり眠って気持ちよく起きられたら、人はそれで幸せに生きていけるらしい。
 何と安上がりな幸福感だろう。人は単純にできている。しかし、ある種の人間にとっては、その幸福感が得難いのである。
 物欲にも食欲にも、もちろん名誉欲や権力欲にも執着がなくなった私のこの頃。幸福感を得られるほどの睡眠がほしいと切に願っている。何をどうすれば、コロンと寝つけるのだろう。 (舞)