朝は納豆をかきまぜる。食通で有名な魯山人は四百回も混ぜたそうだが、ものぐさな私はせいぜい二十回。それで十分美味しい。
 たれをかけてから混ぜるか、混ぜてからたれをなじませるかというのも重要だという。たれで納豆菌が死ぬので、かけずに混ぜるべきだと聞いた。真偽のほどは分からない。納豆容器はかき混ぜやすいように、波型になっている。こうでないと、納豆が箸についてくるくる回ってしまって、具合がよくない。ちょっとした工夫だが、よく気が付いたと思う。
 遠い記憶の中にある納豆容器は経木だった。今でもこだわり納豆などに経木を見ることがある。ポリ経木というのもあった。風情はないが、自然素材より衛生的かもしれない。どちらにしても経木ではかき混ぜられない。普通の納豆はポリスチレン容器である。蓋をベリッと破ることができて、かき混ぜる時に蓋がじゃまにならない。こうなってから納豆を小鉢に移してかき混ぜるという習慣がなくなった。
 今では「パキッ!とたれ」容器。たれの入った蓋が半分に折れて、手を汚さずにかけられる。パキッの時にポリスチレンの粉が納豆に入りそうにも思うが、食べたところで問題にはならないのであろう。便利なのと音の楽しさで好評だという。 なんでもない所が誰かの工夫で少しずつ進化している。気が付くとうれしい。      (舞)