
講演する梅山氏
4月20日、三重大学内の翠陵会館で『都市環境ゼミナール』=伊藤達雄会長=の平成25年度総会と記念講演会が開かれた。
同ゼミナールは昭和47年に行われた三重大初の公開講座の受講者有志が中心となり、翌年の昭和48年に設立。毎月の学習会で、より良い都市環境の創造に向けた研究を行っている。講演では国交省中部地方整備局長・梅山和成氏が『国土政策の新しい局面を迎えて』と題し次のように語った。
南海トラフ地震の対策 産官学連携の戦略会議で
南海トラフの巨大地震による大きな被害が想定されている。当局では東日本大震災後、関係機関と横の繋がりを持って連携し、戦略的なことを検討する場を作ろうと、産官学の色々な方にお声がけをした。その結果、123の機関が参加して頂き、平成23年10月に戦略会議をつくり、24年11月には基本戦略をまとめた。 そのなかで私共が中心になって取り組んでいるのがまちづくり。短期的には、どのように避難してもらうのか、長期的には、まちづくり全体の観点で、市町にも入ってもらいガイドラインを検討している。例えば沿岸部の土地利用は、産業系に転換し住宅は移転をして頂くとか、宅地をかさ上げするとか。
もう一つは防災拠点の問題。司令塔となる政府の現地対策本部がつくられることになっていて、拠点が関東と近畿にはあるが、中部地方にはない。そのため、静岡県庁などに基幹的な防災拠点を5つ程つくる案があり、具体化するため準備を進めている。
また道路啓開は、3日以内に人命救助のためのルートを、一週間以内に緊急物資輸送のルートを開けるのが目標。実際の作業を行うことになる地元の建設業者にも、その態勢を整えておいて頂く必要がある。
社会基盤の老朽化問題 維持管理の法整備が必要
昨年12月に笹子トンネルで天井板崩落事故が起こって以来、社会基盤の老朽化の問題が大きく取り上げられるようになった。管内でも、造られてから50年以上経過している橋梁は現在15%程だが、10年、20年後には約60%にもなり、この問題が現実化している。
維持管理が大きなテーマだが、笹子トンネルの事故後、国が管理しているトンネルは100%、都道府県・政令市では約95%で点検が行われているが、市町村では技術者不足と財政が厳しいことから、4割弱程しか実施されていなかったことが分かった。まず点検をきっちりやってデータに残し、それに基づいて補修・補強を行い記録を管理していくことが必要。そのためには技術者不足と予算をどうしていくのかを考え、法律上で維持に関して規定しなければならない。
産業競争力の強化 中央新幹線を地域の活力に
中部圏は日本のものづくり産業の中心で、近年、世界的な競争が激化しているなか、産業の競争力をどのように確保していくかが重要。
例えば、リニア中央新幹線が2027年度には名古屋まで通る予定だが、いかに地域の活力に活かすか、まちづくりの観点からも考えることが必要で、地域の構造を変えかねない大きな課題だと思う。