連休の一日、車で鈴鹿山脈を越えた。二年ほど前に開通した石榑トンネルを通るのは初めてだった。いなべから永源寺へのルート。近江八幡に向かうこの国道は酷道四二一号線と呼ばれていた。峠越えの悪路と、コンクリート製のバリケードが、その理由であった。一度だけ、滋賀県側からいなべに通り抜けたことがある。愛知川をさかのぼり、さあ峠だという場所に、巨大なコンクリートの塊二個が、物理的に車幅制限をしていた。背丈を超えるコンクリートの間は二メートル。大きい乗用車だとミラーを開いては通れない。小さくても擦りそうで、そろそろと進まねばならない。もちろん三重県側にも同じものがあった。コンクリートに何本もの線があって、ここで傷ついた車の数を物語っていた。
 およそ4・5キロメートルの石榑トンネルは、一車線対面通行ながら、以前の峠道に比べると非常に快適に通行できた。トンネルを出ると、山はまだ早春。竜ヶ岳と釈迦ヶ岳に挟まれた山々に、桜の花のピンクと木々の初々しい緑が美しい模様を描いていた。
 峠は、別の世界との結界でもある。登りつめて、下りに転じる時、何事かを成し遂げたような気がする。トンネルで易々と通り抜けても、やはり何かが開けたように感じた。山を越えただけ、県境を越えただけではない、何かを感じられる場所だ。      (舞)