厚労省が介護保険制度の7段階評価で介護の必要度が低いとされている「要支援1」と「要支援2」について介護保険から切り離すことを検討している。高齢化の加速と共に膨らみ続ける給付金を抑制するため、ボランティア等を活用した市町村の事業へ移行させることを目指しているが、津市の状況を見れば、受け皿となるような団体もなく、「余りに現実とかけ離れているのでは」と、各所から批判が飛び出している。 

 平成12年4月に施行された介護保険制度は、加速する高齢化の影響を受け、介護サービス利用者への給付が増大。津市も例外ではなく、給付は増す一方。現在は新規の介護施設の建設を抑制するなど、保険料の上昇を抑制している。
 今回、政府の社会保障制度改革国民会議が軽度の認定者を介護保険制度から切り離すことを論点にした背景には、現在7・8兆円の介護保険の給付総額が、団塊の世代が75歳以上となる平成37年度には約21兆円にまで膨らむという予想がある。切り離しを検討している要支援1・2認定者への給付は全体の約5%で、現状に換算すると約4000億円だが、平成37年度には1兆円以上にまで膨らむと推測。さらに65歳以上が納めている保険料も全国月額平均4972円から約8200円にまで上昇する見通しだ。
 津市内で3月末現在、介護認定を受けている1万4783名のうち、要支援1と2の認定を受けている人は3781名。給付総額16億7610万円のうち、7046万円を占めている。これらの人達は主に介護事業者によるデイサービスや自宅での家事代行といった生活援助などのサービスを利用している。
 津市の3月末現在の人口区分で見ると65歳は5111人、64歳は5035人と全世代でも最も人口が多いことがわかる。このまま高齢化が進めば、国の想定する状況が現実となることはほぼ確実。
 国は給付を抑えるためにボランティアやNPО法人などを活用した市町村の事業への移行を検討しているが、現状、市町村間での取り組みに大きな差があり、地域間格差が生じることが危惧されている。津市でも国が想定する事業を行えるような〝都合の良い〟受け皿は存在していない。広い市域を持ち、多くの面積を占める中山間地域は特に高齢化が顕著なことを考慮すると、市内でも大きな格差が生じる可能性は高い。介護保険制度が改定される平成27年度に自前の事業を始めることは到底、現実的ではない。
 もちろん、要支援者が介護サービスから切り離される事態になれば、介護事業者の経営にも大打撃。津市内のある介護施設関係者は「要支援者をボランティアに任せれば、問題が解決すると思っているのはふざけた話。もっと制度全体でバランスをとるべきだ」と憤りを露わにする。
 受け皿が無いとなれば、切り離された要支援認定者達は現状の事業者が行っているサービスを自己負担で利用するしかない。しかし一例を挙げると、生活援助は30分以上、1時間未満で2290円。現状は1割負担だが全額自己負担となれば高齢者にとって相当厳しい出費となるのは確実。
 国は前回の改定の際、給付を絞るため、要介護1の認定者でも、認知症でなければ要支援2に押し戻す方針を打ち出している。
 制度の破綻回避は重要な課題であるが、無責任な地方への丸投げは許されるものではない。より現実環境に即した施策が求められよう。