津市の外郭団体である津市学校給食協会の元臨時職員の女(50。2月に解雇)による不正経理で保護者から預かった給食費から多額の金銭をだまし取られた事件を受け、津市教育委員会は5月20日に開いた教育委員会で同協会を解散し業務を引き継ぐための組織作りに向け動き出した。
 全国的なニュースにもなったこの事件、不正経理は04年6月から今年1月までの9年間、食材の調達や支払い業務を担当していた元臨時職員が業者からのパン、米飯代の請求金額を不正に水増しするという手口で、差額計約4千2百万円を着服したというもの。
 市内の中学校から給食費が足りているかどうかの照会があり、帳簿を確認する過程でようやくで不正が表面化した。
 協会から刑事告訴を受けた警察は、捜査を進め着服行為の一部で裏付けが取れたと判断、5月22日朝、女の自宅の家宅捜索に着手。女を詐欺容疑で逮捕している。
 この事件に関しては、発覚当初から市民や保護者から、「どうして分からなかったのか?」「常識では考えられない管理体制だ」など、同協会の内部監査や、教育委員会をはじめ、市関係部局のチェック機能のずさんさが指摘されていた。
 消えるボールペンで業者への振込用氏に金額を書き込み、振り込み後に数字を書き換えて、毎月数10万円から約100万円の差額の不正取得を繰り返し、住宅ローンの返済や韓国アイドルグループのライブ代金等に使ったという、さほど巧妙とは言えない手口を長年にわたり見抜けなかったことに関して、同協会の会長である中野和代教育長は「支払い業務を臨時職員一人に任せていた。チェックも甘かった。二度とこのようなことのないようチェック機能を強化したい」と、今後の対策を話していた。
 その対策に向けての第一弾が、年内に解散させる津市学校給食協会の業務を受け継ぐ新たな組織づくりだ。
 そのために教委は①教育委員会委員でつくる「津市学校給食事務改革推進協議会」と、②保護者、小中学校長の代表者、栄養教諭の代表者と識者でつくる「津市学校給食事務改革推進検討会」、さらに、③政策財務部、総務部、会計管理室および教育委員会事務局職員でつくる「津市学校給食事務改革推進プロジェクトチーム」の3つの組織を設置。学校給食事務の現状を研究すると共に給食用物資の調査の在り方や、会計処理の在り方などを議論、今年7月に「学校給食事務改革推進案(素案)を作成し教育委員会に提言。10月には最終案の作成と提言をする予定だ。
 つまり、行政、教育委員会、保護者、市民、識者など広範囲の関係者が議論し、学校給食の事務改革を推し進めるわけだが、重要なのは、今回の事件のように、もしもの際の責任の所在だ。
 今回の事件への対応を見ても、行政の責任感の希薄さは明らかだ。もしこれが民間企業で起こった事件ならば、責任あるポストの社員はことごとく相応の処分を受けるだろう。
 給食費は、保護者が汗水たらして働いた給料から預かった大切なお金である。そんな当り前の意識すらないのであろうか?そう思わざるを得ない今回の事件。2度と起こらないよう抜本的な改革と、職員の意識が求められよう。