昼休みに友人がパソコンで何かやっていた。「いや、見ないで」と言いながら見せてくれる。顔写真の編集中だったのだ。
 さっき廊下で撮った写真を証明書用写真にするという。背景の壁のムラを消し、洋服の赤を灰色にと、ちょっとした塗り替え作業。
 「ついでにここを消したくなるよね」と言いつつ、ほうれい線をなぞる。「口元のシワがまる子の母さんみたい」小さな証明写真ならほうれい線の濃さなど分からないだろうが、そこはそれ女心というものである。
 面白がって横から口を出す。「プリクラみたいに、目を大きくしたらどう?」ほんの1ミリずつ上下に拡大しただけで、目がくっきりぱっちり若々しく見える。
 化粧品のコマーシャルの女優さんたちは、こういう作業をしてもらっているのだろうか。シミひとつない頬がつやつやと輝いている。女優さんにもシワやほくろの一つぐらいはあるだろう。毛穴もあるはずだ。
 顔写真修正というと人聞きが悪いけれど、少し編集するだけなら普通のおばさんにも許されるだろうか。無料でダウンロードした写真編集ソフトで、昼休みにちょこちょことできるほどの簡単さだ。
 目をぱっちりさせて、ほうれい線を消したら、若々しい写真ができあがった。でも免許証に使うわけにはいかないだろうね。      (舞)