市内のコロニーで繁殖するカワウ アユ釣りシーズン真っ只中だが、津市内でも雲出川を中心にカワウによる川魚の食害が深刻化しており、内水面漁業関係者たちの頭を悩ませている。イノシシ・サル・シカなどの獣害対策が進んでいるのに比べると、行政からの支援もほとんどなく、猟友会による追い払いなど地道な対策を行っているものの、苦しい状況が続いている。 
 カワウは一時期、絶滅寸前にまで追い込まれていたが環境の改善や餌となるアユなどの魚の放流などにより、ここ20年余りで生息数が激増。更に本来の生息域は中下流域だが、上流にまで生息範囲を広げている。
 成鳥は体重約2~3㎏に対して1日当り約500gの魚を食べると言われており、内水面漁業に深刻な被害を与えている。県内では櫛田川・宮川の他、津市内を流れる雲出川でも大きな被害が発生している。
 最も有効な対策は駆除などによる個体数調整ということもあり、カワウは平成19年より狩猟鳥獣となったが、肉や羽毛に価値がなく好んで撃つハンターはいない。また、カワウはシカ・イノシシ・サルなどと共に国の鳥獣害対策特措法の対象とはなっているものの、直接的な被害を受けているのが内水面漁業関係者に限られるため、三重県では本腰を入れた支援を行っていないのが現状だ。
 県内のアユなどの水産資源への昨年の被害総額を見ると、1万4700㎏で4410万円。金額だけで見ると、他の獣害より被害は小さいが釣り人が川で釣りをするために必要な遊魚券の販売で収益を得ている内水面漁業関係者にとっては釣果に影響が出れば売上げが下がり、死活問題となる。県内24の内水面漁協が組織する「三重県内水面漁連」では猟友会に依頼し、県内全域で年間約800羽ペースで駆除をしてきたが、被害が減る気配がない。
 津市の雲出川漁協でも昨年に、2625㎏で787万円5000円の被害が発生。今年もアユ釣り解禁前に同漁協の10支部で合計2140㎏のアユを放流したが相当の被害が出ている。更に今年は水不足で上手く遡上できずにいる天然アユを狙い打ちされるなど、例年にも増して深刻だ。同業漁協ではシーズン前に川の水面にテグスを張ったり、シーズン中も猟友会に見回りや追い払いを依頼するなど、出来る限りの対策を講じているが、苦境が続く。
 津市内には垂水の二重池や雲出川支流の河口付近、君ケ野ダム付近などにカワウのコロニーがあるが、下手な追い払いや駆除をすると生息域が広がる可能性もある。先進県では木の上にある巣の卵を石膏製の擬卵にすり替えたり、卵を冷却して孵化しなくするなどの対策を行い成果を出しているが、これらの対策を行うには莫大な費用と労力が必要。行政の支援がほとんどない県内では、現状より踏み込んだ対策ができないのが実情だ。
 内水面漁業は過疎地域の貴重な観光資源になっているケースも多く単純に被害額だけで図れない要素を含んでいるのも事実。また、県内でも海で養殖されている魚への被害報告もあるだけに、今後は行政もより広い視点を持って、カワウ対策に取り組んでいく必要が出てくるだろう。