夫がメールで、勤め先の飲み会で今夜はビアガーデンに寄ると知らせてきた。夕食の支度の必要がないのはとてもうれしい。自分一人の食事なら、残り物で簡単に済ませられる。そして、こんな暑い日にビアガーデンで冷たいビールをぐいっと飲んだら、どんなに気持ち良いかと思う。「飲めない私は、ちっともけなりないわ」と返信することにした。
 ケイタイに入力しようとして、「けなりい」だったか、「けなるい」だったかと考えた。言葉で発するときには意識していなかったが、いざ書こうとすると分からない。  辞書で調べてみた。新明解国語辞典には載っていないから、標準語ではないらしい。旺文社古語辞典に「けなりい」が載っていた。中世・近世語とある。うらやましいよりけなりいの方が、心情が伝わると思う私は感性が古いのか。
 けなりないわと返したものの、実はけなりい。ビールが好きだという、そのことがけなりい。アルコール好きの人は、人生の楽しみがひとつ多いのではないだろうか。
 暑い日にビールをぐいっと飲んだ時は、空きっ腹におにぎりをがぶっとやった時のような満足感がするのだろうか。ケーキの生クリームをペロッと舐めた時のような幸福感がするのだろうか。まんじゅうのあんこを舌の上で転がした時のような充足感がするのだろうか。下戸には分からぬ境地なのである。  (舞)