大失敗だ。息子の誕生日を忘れていた。一週間も過ぎてから思い出したのでは、おめでとうも言いにくい。だけど、言わないわけにも行かないし。
 大事なことを忘れていたことがショックで、認知症の初期症状を調べてしまった。四十歳から認知症になる人もいるそうだから、可能性は十分ある。物忘れもあるし。
 調べてみると、加齢によるもの忘れは、起きた内容の一部を忘れてしまう症状のことで、認知症によるもの忘れは、起きたこと全部を忘れてしまうという。食事のメニューを忘れるのが一部で、食事したことを忘れるのが全部。別れて暮らす息子の誕生日を忘れたのは、一部だろうか、全部だろうか。
 実は、ずっと前にも子供の誕生日を忘れたことがある。娘が中学生の頃のこと。娘も何も言わなかったので、そのまま二週間も過ぎてから気が付いた。ひたすら謝るしかなかったが、多感な年頃の娘の心をひどく傷つけたと思う。
 今回の息子はどうだろう。怒るだろうか。悲しむだろうか。それとも心配してくれるだろうか。おそるおそるおめでとうとメールを送ったが、まだ返事は来ない。
 私の誕生日を覚えていたことのない息子である。友人たちと賑やかに誕生日を過ごし、親のことなど思い出しもしなかった可能性もある。少し寂しいけれど、そうであってほしいと思う。(舞)