津市が収税課内に平成23年度に設置した特別滞納整理推進室が大きな成果を挙げている。市税や健康保険料など6債権から徴収困難となった案件について、担当課からの移管を受け、滞納者の財産差し押さえ等を行っており、24年度末までに計10億円を徴収。更に徴収ノウハウを各課へ伝えたり、同室への移管予告などで間接的にも収納率向上に貢献しており、市民負担の平等性を守る『番人』としての役割を果たしている。 

 市税の滞納繰越金を始めとする市が抱える未収金は平成24年度決算で総額約75億円と莫大だ。その中から時効により、回収不能となる不納欠損が毎年数億円単位で発生している。市政運営の根幹と市民負担の平等性を揺るがしかねない問題だけに津市にとって最重要課題の一つといえる。
 そこで先進事例などを参考に平成23年4月に収税課内に設置された特別滞納整理推進室では各担当課から特に徴収が難しい『困難案件』の移管を受け、徴収に当たっている。その内訳は平成24年度末までに市税1512件約43億7000万円、国民健康保険料518件4億360万円を筆頭に介護保険料・保育所入所負担金・後期高齢者医療保険料を合わせた計2318件約48億6000万円。更に今年から下水道受益者負担金・分担金15件約145万円の移管も受けている。
 同室では、これら未収金を徴収すべく、滞納者の財産調査を徹底的に行い、不動産・預金・給与などの差し押さえを実施。平成23年度で373件約5億5800万円、平成24年度約754件約5億6000万円の合計約11億1800円を徴収に成功するなど、大きな成果をあげている。
 また、同室はこれら直接的な成果だけではなく、各債権の徴収を担当する各担当課の収納率が軒並み上昇するという波及効果も生み出している。庁内で研修会を開き、各担当課に徴収ノウハウを伝えることで、今まで制度の運用や保険料・負担金の賦課だけに軸足を置いていた各課の意識が大きく変化。市税や各保険料は年に10%を超える延滞金が課せられ、滞納金が増えるほどにますます納付が困難になるため、滞納者に現年度納付の徹底を求めるなど、より責任ある姿勢で各課の職員たちが債権の徴収に尽力。一例を挙げると、国民健康保険の滞納繰越分の収納率に関しては平成22年度の10・3%から平成24年度で21%まで上昇した。
 その他にも、滞納者に対して、厳しい滞納整理を行う同室へ債権を移すという移管予告を行うと、納付に応じてもらえるケースも多い。それら積み重ねの結果、平成22年度決算で約88億8000万円あった全体の未収金が平成24年度には約77億円まで圧縮している。
 そんな活躍を続ける同室の礎ともいえる存在が収税課だ。同課が担当する市税の収納率は平成24年度で98・6%。市税徴収の専門部署である同課は同室の設置前から、差し押さえの実施などを積極的に行っており景気が冷え込む中でも7年連続で収納率を向上させている。同室でも、同課が培ってきた技術が生かされており、日頃から緊密な連携で、滞納整理に当たっている。
 今後の課題となるのは当然、更なる収納率の向上。それに必要となるのはマンパワーだ。同室では室長以下6名、収税課では12名が徴収業務についているが、この人数が十分かという議論は抜きにしても、徴収という業務の性質上、投入した人数に比例した成果が出るのは紛れもない事実だ。今後も一人ひとりの資質の向上に向け、弛まぬ努力を続けることは大切だが、増員も必要な選択肢だろう。
 2500人体制で限られた人材の適切配置も市政の大きな課題だが、健全な市政運営の原資となる各種債権の適切な収納は最優先事項のはず。市民間の負担の公平性を守るべく、津市は全庁を挙げた組織編成で臨む必要があろう。その中心となって活躍する存在といえる同室に期待が集まる。