

検索キーワード




県内の知的障害者入所施設の待機者数は今年4月1日現在で480件と増加傾向にあるが、平成18年の障害者自立支援法成立後、国は新設を認めず、県もそれに従う形が続いている。しかし9月に三重県知的障害者保護者連合会が三重県議会へ新設等を求める請願書を提出し、10月の県議会本議会で採択されるなど状況が好転。現在は国の動きを見守る状態だが保護者や関係者の間では大きな前進に向け期待が集まっている。
国は障害者自立支援法施行後、24時間体制で利用者の支援を行う入所施設は、「障害者を地域から孤立させ、社会参加や自立に対して不適切な存在」と位置づけ、新設や定員の増員を認めない方針をとっている。その代わりに、最小限の補助を受けながら利用者が授産施設などで日中活動を行い、それなりに自立した生活を地域の中で行うグループホームやケアホーム(以下、GH・CH)の新設を推進している。
しかし、現実は県内24の入所施設で今年4月1日現在、待機者数が480件にまで膨らんでいる。ところが、県は国に従う形で入所施設の新設や定員増加を一切認めていない。なぜ入所施設を希望する声が大きいかというと、重度の障害者はGHやCHで暮らすのが難しいからだ。
重度の知的障害者は、肉体的にも精神的にもデリケートである者が多く、一人ひとりに合わせた24時間体勢での手厚いサポートが必要不可欠となる。少ない人員配置で、夜間などは更に手薄になるGH・CHで重度障害者が暮らすことができないのは想像に難くないだろう。
更に18歳未満の障害児を対象とした入所施設では、対象年齢を超えても次の入所先が見つからないため、やむなく入所を続けている加齢児と呼ばれる障害者たちが県内でも10月1日現在で25名いるが、平成30年3月末を期限に退去を迫られる問題まで発生している。
〝地域移行〟といえば聞こえは良いが、行き場の無い重度の障害者たちは結局保護者や家族の下に戻るしかない。だが、その頼みの綱も高齢化が顕著で、40代後半の娘が重度の障害を抱えている70歳代のある保護者は「妻がもし居なくなり私一人になったら風呂に入れることすらできない」と苦しい現状を打ち明ける。
この現状をなんとか打開すべく「三重県知的障害者保護者連合会」=伊藤憲一会長=は、入所施設の拡張(新設)と更なる質の向上を求める請願書への署名運動を6月中旬より展開。9月6日には「障害者入所施設の請願書」を県議会に提出。10月8日に健康福祉病院常任委員会で「障がい者入所施設の拡張(新設)とさらなる質の向上を求めることについて」として採択され、同16日の県議会本会議でも採択を受けた。 10月30日には県議会の山本勝議長が、その内容も盛り込んだ医療・介護分野の意見書を、田村憲久厚労相に提出している。
同連合会の伊藤会長は、「県には今まで意見してもはね返されてきたが、言うべきことは言うべき。重度の障害者を親の力だけで在宅介護するのは難しい」と現実的な対応をするよう訴える。今回の採択に尽力した同委員会所属の中森博文県議も「障害者が社会参加をするための地域拠点となる施設は必要」と、その活動を後押しする。
現在は国の動向を見守る段階だが、同連合会では署名活動を継続。10月25日現在で8800枚述べ3万2838人の署名が集まっている。これを障害者や保護者・家族が安心できる仕組みや政策の実現の要望と共に県へ提出する予定。
今後、どのような形で結実するかは分からないが、大きな一歩を踏み出したことは間違いない。
2013年11月21日 AM 5:00
<< テーマは「津城復元」 三浦教授招き高虎の集い <28日> 津西LC20周年記念事業 助成金額200万円 青少年ボランティア団体を募集 >>