草生天神こと「比佐豆知菅原神社」

 阿由多神社からは安濃川にかかる明合橋を渡り、明合小学校の脇の坂道からグリーンロードへ戻る。
 冬の田園地帯を走っていると走り始めは強風が吹き抜ける度に思わず、身をすくめてしまうほどだが、ペダルを回すごとに体が温まり段々、心地良くなってくる。この日は少し厚手の上着を羽織っていたので動きづらい。そろそろまともなサイクルウェアの購入を検討すべきかもしれない。
 私たちの乗っているスポーツタイプの自転車といわゆる一般的なママチャリのなにが違うのか。一言でいうならば、ペダルから伝わるエネルギーを推進力に変える効率がとても良いということだろう。車体重量は20㎏を越えるママチャリと比較すると半分以下で、各部のパーツはかっちりと組み上げられつつも軽快に動作する。初めて乗った時は一漕ぎしただけで、これほど進むのかと感動したものだ。しかし、それが最大限生かされるのは、〝エンジン〟の性能があってのこと。しばらくはチューンアップと同時に、ボディの軽量化も課題となる。なんとも悩ましい話だ。
 明合からグリーンロードを西に横断し、野口の野菜茶業研究所の脇を抜ける形で再び草生方面へ向かう。余談だが、昔この研究所に勤めていた友人の父はトマト栽培の権威で健康系のテレビ番組にも出演されていたそうだ。愛知県在住のその友人とは私が大学生の頃に知り合い、今でも仲が良い。私がこの仕事に就いてから、彼の父のことや、彼が小学生の夏休みなどに安濃町で過ごしたことを初めて驚いた。その後、彼の父を直接知る人と出会い、話を聞く機会に恵まれた。私は直接会ったことはないが友人が語る茶目っ気たっぷりの人物像とぴったり重なり、思わず笑ってしまった。その際、「しばらくお会いしてないけど、先生はお元気なの?」と聞かれたことを友人に伝えると「親父も懐かしいって喜んでた」と後日連絡があった。距離と時間を越えたささやかなる邂逅のきっかけをつくれた嬉しさと共に、人と人とは偶然のような必然で結ばれているのだと強く感じたことを思い出す。
 県道28号から、足の赴くままに任せ、草生天神の通称で親しまれる「比佐豆知菅原神社」へ。集落から、神社に向かう上り坂は今までで間違いなく、一番きつい。M君と私はほぼ同時にギブアップし、自転車から降りる。情けないが膝が少し笑っている。
 しばらく坂道を上ると、ようやく神社に到着。ここは菅原道真公を祀っている由緒ある神社で、学問の神ということもあり、境内には津市内だけでなく様々なところから合格を祈念する絵馬が沢山奉納されている。それぞれ書き手の個性が出ており、眺めるだけで楽しい。簡単にお参りを済ませると、神社を後にする。
 その後は、当てもなく連部・妙法寺・今徳の辺りをぐるりと回りながら、目についた寺院や史跡を散策。すると時間は16時前に。
 日没までに、この日の終点の安濃中央総合公園に戻らなければならないが、その前に隣の明合古墳に立ち寄る。全国でも大きさは上位に入る古墳の上に立ち、傾き始めた太陽を眺めながら次回の道程をシミュレート。「まだまだ先は長い。のんびりいこう」と心の中で思いつつ。(本紙報道部長・麻生純矢)