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三重県内企業の障害者雇用率は全国ワースト1位と厳しい状況が浮きぼりとなる中、1月24日にアスト津4階のアストホールで産官学連携による新たな雇用創出の形を模索する『ひろげよう!はたらくよろこびフォーラムinみえ』が開かれた。主催=三重大、津市、県教委、稲葉特別支援学校。企業、大学、行政がそれぞれの考えを語るだけでなく、人材育成に向けた教育機関の創設など具体的な方策も飛び出していた。
基調講演は障害者施設の経営者革新に関する情報を発信している季刊誌「コトノネ」の発行人・編集長で㈱はたらくよろこびデザイン室代表取締役の里見喜久夫さん。演題は「障がい者雇用とメディアによる情報発信の有効性」。
里見さんは、「障害者が働く現場を取材し、障害者が普通に仕事ができることに驚いた」と感動する一方、障害者施設の閉鎖的な空気にも問題があると指摘。
更に取材で一般を対象に「障害者施設の商品を買いたいですか?」とアンケートをしたところ、買いたいが10・6%、物が良ければ買いたいが76%、なるべく買いたくないが13%で、買いたいの中でも家族に障害者いるが35%、37%が友達に障害者がいる人で、残りは障害者と関係のない人という結果だったことを紹介。それを踏まえ、現在、そば打ち名人と呼ばれているある施設に通う自閉症の青年が施設でつくったそばを、母親や叔母が買い、近所の人たちに配ったら次々と注文が入るようになったという事例を挙げた。そして「まずは母親など愛情がある10・6%の人に売れる商品をつくってほしい。そして、友達をつくるために社会に出ることも大事」と語った。
最後に誌面の今後の方向性を語る中で「この10・6%に情報を届けて、どう伸ばしていくのかがコトノネの大きなテーマ。良い物を作っていくのも大事だが、障害者そのものの存在を受けとめてもらい、共にいきていく存在として認めてもらうことが大切」とメディアを通じた情報発信の重要性を訴えていた。
続く、座談会「障害者雇用の新しい試みと経営の進化」では三重大副学長の西村訓弘教授を座長に、里見さんに加え、県内企業でパン製造販売業「㈱コーンブルメ」社長の樋口豪男さん、三重大教育学部特別支援教育准教授の菊池紀彦さん、三重県雇用経済部障がい者雇用推進監の瀧口嘉之さんが参加。
国の定める法定雇用率が2%で、三重県内は1・6%と低迷する中、樋口さんが経営するコーンブルメは62名中の26・2%と県内企業でトップの数字を誇るが、高知県の企業を見学した際、全社員35名の内、重度の障害者が中心の30名が健常者と変わらないスピードで仕事をしながら夜勤をこなしていることを目の当たりにし、更なる可能性を感じた。「この問題の解決には、なぜ三重県が雇用率最下位になるのか、なぜ企業側が採用しないのかという事を行政が追求しなければならない」と問題提起した。
菊池さんは三重大学内にある障害を持つ人々が職員として働く「キャンパス環境整備室」に日々の取り組みや学生との交流・授業への係わりを紹介。障害のある学生の支援を目的とした「障がい学生支援実践」という授業を全国の大学に先駆けて開講していることや聴覚障害を持つ学生への支援なども語り「障害のある学生やない学生、教員によるコミュニティを大学として作っていくことが、私たちの教育資質向上や学生が社会に出た時の大きな力になる」と障害者との日常的な交流が社会を変えるきっかけとなると示した。
瀧口さんは業種別での雇用状況など詳細なデータを基に県内の障害者雇用の状況を分析。社内に障害者に任せる適当な仕事がなく従業員への理解が進んでいないという企業側の実情を解説。平成26年度に県総合文化センターに開業予定の「仮称・ステップアップカフェ」では障害者がいきいきと働きながら社会で働く準備や必要な能力を身に付けたり、授産施設が作った商品の販路拡大などを想定している事などを説明。
様々な意見が交わされる中で樋口さんは「会社の欲しがる人材を育てなければいけないが現状の特別支援学校の教育ではそこまで手が届かない。支援学校を出た後に社会に出る基本姿勢を学ぶ学校が絶対に必要。それは三重大しかない。そうすることによって県や企業も係わり易くなり我々が実戦部隊となって動ける。そのために産官学の連携が必要」と具体的な解決策を提案し、注目を集めていた。
2014年1月30日 AM 5:00
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