講演する野口健さん

 13日、「21世紀のエネルギーを考える会・みえ」は登山家・野口健さんを招き地区別講演会in津を開催。約350名が聴講した。共催=津北商工会、津市商工会、伊賀市商工会、津・伊賀商工会広域連合。
 7大陸最高峰の世界最年少登頂記録など、登山家として輝かしい功績がある野口さん。その一方で富士山やエベレストの清掃活動や小学生から大学生を対象とした環境学校を開くなど環境の大切さを訴える活動にも尽力している。
 野口さんは「ヒマラヤから環境問題を考える」を演題にまずは、様々な環境活動の原点となった清掃活動について紹介した。活動には登山のサポートをしているシェルパ族の協力が不可欠だったが、今もカースト制度が息づくネパール社会では、ゴミ拾いは身分の低い部族が行うこととされており、中層に属する彼らからは、その意義が全く理解されなかったことを説明。高地での過酷な清掃活動の肉体的ダメージで、幾人ものシェルパ族の若者が命を落としたが、彼らに環境意識が芽生え、国のシンボルであるエベレストが変われば、街中にゴミが溢れるネパールが変わるという思いを持つようになった。そのことから、海外でも汚い山として有名だった富士山の清掃に「富士山から日本を変える」という決意で取り組んでいることを語った。
 地球温暖化の影響によるエベレストの氷河湖の洪水をなんとか防ぎたいと奔走する中で、温室効果ガスの排出量を抑えるため、様々なエネルギー問題への知識を深めた。そして文明社会を支えるエネルギー問題については、自然を守ることを前提としながらも、アフリカの国定公園内には動物に配慮した形で地熱発電施設が置かれていることなどの例を挙げ、「エネルギー問題は落としどころ。何かを犠牲にしなければエネルギーを取得できないと思う」と現実的な考え方を示した。
 そして、原発問題などの議論で推進派か反対派の二元論で語られがちな現在の風潮について「人間には色んな思想がある。安易な色分けが社会に自ら限界をつくっている」と批判。様々な意見の共生が未来をつくる原動力となることを訴えていた。