検索キーワード
国土調査法に基づき、全国の土地を一筆ごとに面積や境界などの調査を行う『地籍調査』だが進捗率の全国平均50%に対して、津市は2・5%(共に平成24年度末)と低迷。個人には土地の資産価値上昇や売買の円滑化、行政には税の公平性の担保や公共事業の円滑化とメリットも大きく、災害発生時の復興にも役立つが、調査実施には住民サイドの理解が不可欠。行政の今まで以上に積極的な姿勢と周知が求められている。
登記所(法務局やその関連機関)に保管されている地図は、明治初期の地租改正事業の記録を基につくられたものを使っている地域が未だに少なくない。そのため、土地の面積や境界などが現状とかけ離れていることも多く、公共事業などを行う際の公図混乱を引き起こす原因となる。更に土地の固定資産税は登記簿を基に課税するため、古い地図を使っている地域では、必ずしも正確な情報を基に課税がなされているわけではないという現実がある。
そのような状況を正すために、昭和26年より全国で行われているのが『地籍調査』。土地を一筆毎に地権者立ち合いの下で境界・面積などを測量。それを基に登記所の登記簿を書き換え正式な地籍図をつくる。
この事業は国交省の直轄事業だが、事業主体は市町村といった各自治体。平成24年度末の進捗率は50%で国は平成22年度より10カ年計画で未実施地域の進捗率上昇を促している。
三重県に目をやると京都府(8%)に次ぐ、進捗率ワースト2。調査対処の土地面積5336平方キロメートルに対し、調査済の土地が458平方キロメートルで進捗率は8・59%となる。
正しい地籍図がある場合には、災害発生時の復興が円滑に行えるという利点もあり、それは東日本大震災で深刻な被害を受けた地方で実証済み。進捗率が岩手県91%・宮城県88%・福島県61%と高水準にある各県では、津波で地上の目印が流された土地の境界確認が素早く行えた。
そのため、東海・東南海地震発生時には大きな被害が予想されている三重県内でも、震災以降は調査の価値を再認識し、積極的に取り組む自治体が増加。全体の数字自体は、まだ低いが県内29市町のうち24市町が調査に取り組んでいる。
津市は調査対象地682・9平方キロメートルに対して、調査済みの土地は13・43平方キロメートルで進捗率2・5%。広い市域を考慮しても決して褒められた数字とは言えない。
調査経費の内、自治体負担割合は5%と軽く、地権者の負担も全くないが調査が進まない理由は、その莫大な労力にある。特にトラブルの原因になり易い境界線確定については全筆の地権者が立ち会う必要があり津市でも、1カ所当たり、最低3年はかかる。そのため、現在は公図混乱の発生時や自治会から直接呼びかけがあった場合にのみ調査を行っている。
地権者には、土地の売買などの際に測量が不要になるので、土地の資産価値が増したり、行政にとっても公共事業の円滑化・税の公平性の担保・防災機能向上と労力に見合うメリットも得られる。市内の土地家屋調査士の後藤昭久さんは、「ノウハウを持つ土地家屋調査士会も調査への協力体制はできており、もっと効率的なやり方はある」と市の消極的な姿勢に怒る。
高台防災公園整備が計画されている香良洲では国の直轄で調査が進められるがその他の津波浸水予想地域などでも早急に進める必要がある。調査の性質上、自治会の協力は不可欠で、積極的な調査参加への呼びかけや関係団体との連携も含め、今まで以上に踏み込んだ施策が求められよう。
調査の問い合わせは津市建設政策課℡059・229・3196へ。
2014年2月27日 AM 5:00