年初からの各国主要株価の下落率は日本14・3%、米国7・5%、ドイツ6・4%、中国5・8%、インド4・7%、ブラジル10・6%、ロシア11・1%となっています。
 日本株の下落率はなんと新興国より大きい。日本株=日経平均の出来高の6割以上を海外勢が占めています。世界の年金や投信などの長期資金のほか、最近では短期売買のヘッジファンドが日々の相場に大きな影響を与えています。
 年末の海外勢のスタンスは日本株上昇と円安のセットに早期の日銀の追加緩和の実施が期待されたものですが、その期待が徐々にはがれ、円高の進行との相乗で下落率が大きくなったようです。
 海外勢は一部、日本株から欧州株に切り替えているようです。海外勢の買い付けのピークを見極める参考指標として日経平均先物に伴う裁定取引の現物株の買い残高の推移があります。 今後の日本株の上昇要因として、日米の景気改善指標、円安水準の是正がポイントになります。
◆なぜ円高が持続するのか 昨年までのドル高円安傾向は、米国景気回復による金利上昇と日銀の量的緩和継続による金利低下に伴い日米金利格差が拡大したためでした。年初からは寒波の影響もあり日米経済の停滞・悪化指標が相次ぎ発表されたこと。12月に次ぎ1月のFOMC米連邦公開市場委員会でも量的緩和縮小が実施され、投資マネーが新興国から先進国、特に米国に流入、その資金が米国債に流れ利回りを低下させ、日米金利差縮小を招いたことが要因です。
 昨年一年間の新興国から先進国に流入した金額200億ドル相当が年初から既に新興国から流出していると云われています。今後、米国の経済改善指標発表や新興国の落ち着きが確認されれば、ドル高円安に戻る時期は速まると思われます。
 ドル高円安の目先ピークを見極める参考指標としてシカゴ通貨取引のドル円の残高状況があります。
◆世界経済の大きな転機である米国の金融緩和縮小が開始
 昨年12月、FOMCで毎月850億ドルの緩和金額を100億ドル減少、1月のFOMCでも同金額が減少し650億ドルに、今後も会合ごとに減少させ秋口にはゼロにする方針が予測されています。
 新興国がこの決定に困惑と戸惑いを抱き、その不安が新興国から先進国への流出につながっています。今回の措置は突然ではなく、昨年5月に金融緩和縮小実施の可能性を示唆し、その後半年が経過しています。 米国は新興国に緩和縮小の準備期間を与え、新興国各国はその影響を和らげるための政策を実施した国とそうでない国によって、株価や為替の下落に差が出ています。
 世界経済はこれまでの異常な超金融緩和政策から適度に金融を引き締めた経済成長にソフトランディングを試み始めています。
◆金利上昇時の株価動向  過去の米国の金利上昇時の比較では、94年以降が相当とみなされます。米国の政策金利は94年3%から95年6%、96年5・25%、NYダウは94年から96年まで約1・7倍になっています。勿論単純に比較はできません。
◆今後も生成・崩壊を繰り返すバブルとその見極め方 08年のリーマンショック後の世界危機に対し各国の超金融緩和対策で景気は底を打ち回復してきました。世界の株式の時価総額の07年高値を昨年10月以降更新しています。
 各国は、これまでバブルが崩壊した後、世界的な危機を救済するために更なる大きな金融緩和実施によって新たなバブルを作り出しています。現在のワールドマネーの規模は、金融危機前の2兆ドルから7兆ドル超に急拡大しています。その為、数年後に到来するバブル崩壊の衝撃はリーマンショックを更に上回る大きいものになることが予想されますので十分に注意が必要です。バブル絶頂期の見極め方として、これまでの投資層以外の投資家に買い付けてもらわないと更なる高値は更新しないわけです。 相場上昇時は売買金額も増加するため、さらなる高値更新には膨大な買い付けエネルギーが必要となります。高値時の1・5倍から2倍以上の買い付け資金が必要となるため、その資金が縮小・枯渇すればバブルの崩壊が近くなります。これまで見向きもしなかった人々が相場に参加するような状況になれば要注意、本屋さんで相場を煽るようなタイトルの本が多く積み上がっている状況も要注意です。
◆世界の投資マネーの動きと資産運用の変化
 これまでも今後も世界の投資マネーは常に上昇すると予測される投資対象を求めて流れ続けていきます。リーマンショック後は先進国から新興国に、一昨年からは新興国から先進国に。金融商品では景気低迷時は株式から債券に、景気回復時は株式も債券も共によい状況に、景気上昇時は債券から株式に資金が流れます。今後も数年は先進国への流入が続くと予想されます。グローバル時代を迎え、世界の投資マネーは瞬時に大きく投資対象を変化させます。海外の株式や債券、リートを保有する国内投資家は以前に比べ増加してきましたが、まだまだ国内株式を保有した投資家が多い状況です。有価証券運用は長期投資が基本であるとして、一度買い付けた商品を状況の変化にも関わらず長期に保有したままの投資家が多いことに驚かされます。長期投資と長期保有とは違います。個人投資家の6割が未だに損切ルールを持たないで投資を行っているというアンケートもあります。投資対象の収益力に変化が生じ下落しても売却できず含み損を抱え、結果的に資産形成の失敗を繰り返している現状が多くあります。投資マネーは常に動いていますが、大きな変化の時には自分の保有商品の見直しが必ず必要になります。
 資産運用の手法でヘッジファンドの運用を参考にしましょう。ヘッジファンドはどのような状況下でも投資リターンを確立する運用を心掛けています。勿論絶対ではありませんが、その運用手法や考え方を参考にすることが今後の相場の変化では大事になります。
 もしそのような考えをお持ちなら、一度勉強会に参加ください。
(毎月第二木曜日10時から11時45分・津中日文化センターセンターパレス4階、毎月第二金曜日午後6時30分から8時まで津公民館センターパレス2階、連絡先講師宮崎☎090・5008・0874)