津市は農林水産省など7府省が進める生物由来の有機資源を活用した産業の創出と循環型社会の構築を目的とした『バイオマス産業都市』の認定を受けた。今後、企業と連携し、間伐材など市内産木材を使った発電等の事業化で、エネルギーの〝地産地消〟をめざす。荒れた森林や里山の再生にもつながり、防災機能の向上や林業振興による雇用創出など多面的なメリットもあることから大きな期待を呼んでいる。

 3年前の東日本大震災の発生以来、新エネルギーの開発は国政規模の課題となっている。そんな中で注目されているのが、木材・生ごみ・し尿・下水汚泥など生物を原料とした有機資源「バイオマス」だ。
 そこで、内閣府や農林水産省などの関係7府省ではそれを活用したまちづくりをめざす地域の支援を行う『バイオマス産業都市』を募集。津市は2次募集分に応募し、先月末に認定を受けている。
 津市は全市域約710㎢の内、およそ6割の約420㎢を森林が占める。美杉地域を始めとする中山間地域では、かつては林業が盛んだったが木材の輸入自由化や木造住宅の減少に伴い、木材価格が下落。手入れされないまま放置された山林が増え、災害発生時に重要となる保水機能の低下などの問題を招いている。市は間伐の補助を行っているが、コストが見合わず、間伐材の3分の1は林の中に放置されているというのが現状だ。
 今後、津市が事業化をめざすバイオマス事業は大きく4つの内容に分かれる。1つ目は前述のように市内に存在する豊富な木材を活用した「木質バイオマス発電」。2つ目は市内に大規模な食品工場があることから、食品廃棄物による固形燃料やバイオガスの製造。3つ目は、間伐材を使った燃料チップやペレットなどの製造。4つ目は下水や、し尿処理で出る汚泥を原料とした固形燃料の製造。
 この4つの中で、最も早く事業化できるのは、全国各地で実用化されている木質バイオマス発電。間伐材など未利用罪を使った発電は、電気の買取価格が1kw辺り34・56円と優遇されているのも特徴。また製材の過程で出るおがくずなどを活用すれば、製材業者の処理費用圧縮もできる。市は事業主体となる企業と交渉を進めており、今年度中には事業を開始する見込み。
 その次に実用化が近いのが、木質バイオマスを作った固形燃料。石油と比べて価格変動が小さいので、ペレットストーブや農業用の木質ボイラーなどの普及推進で相乗効果を狙う。
 バイオガスについては三重県が力を入れており、汚泥の固形燃料化と共に実証研究などに取り組みながらできる限り早期の実用化をめざす。これら事業を運用する際に農水省から、実施主体の企業に直接補助が出る仕組みとなっている。
 特に、森林は再生可能な資源であり、一定割合のエネルギーを地産地消しながら循環型社会の構築に大きく寄与する。更に温室効果ガスの削減効果や、過疎化に悩む中山間地域の雇用創出をはじめ、森林が手入れされることで防災機能が向上するなど、あらゆる面で成果が期待できる。市は10年間の経済効果を729・8億円と見込んでいる。
 バイオマス先進地で有名なのは、昨年発売され、大きな話題を呼んだ角川書店の『里山資本主義』=藻谷浩介・NHK広島取材班=の中でも紹介されていた岡山県真庭市。木材価格の下落から、同市にある民間企業がいち早くバイオマス発電や固形燃料の販売に取り組んでおり、市もバイオマス政策課という専門部署を立ち上げ、ペレットストーブやボイラーの購入に補助金を出し、普及を後押しするなど先進的な施策で大きな成果を上げている。
 先月の津市議会の定例会でこの件について、質問をした田中勝博市議は「新たな林業振興策として期待できる。今後、企業などの資本をどれだけ巻き込んでいくのかが重要」と話す。森林資源が豊富な津市の実情に合った注目分野だけに、今後の展望が楽しみだ。