こぶ湯のすぐ下に流れる清流・雲出川

 こぶ湯のすぐ下には、雲出川が流れており、簡単に川原へ降りられるようになっている。清流を前にしたM君は澄んだ水に心を奪われている様子。アウトドア派の彼にとって、更に上流をめざす今日の行程は楽しいものになるはずだ。
 家城神社を後にした私たちは、たわわに穂を実らせた麦畑の中を走り、県立一志病院の前から、南家城の集落を美杉に向って抜けていく。今では少し寂しくなってはいるが、ここの街並みは古き良き時代の温もりを感じさせてくれる。
 再び、県道15号に出るとまっすぐ南下。雲出川沿いに立てかけられた藤原千方伝説の地と書かれた看板を発見。M君は千方の名を見ても、余りピンとこないという顔をしていたので「刀や矢も通さない頑丈な体を持つ金鬼、水を自在に操る水鬼、突風でどんな敵も吹き飛ばす風鬼、完全に気配を消し去れる隠形鬼という4匹の鬼を従えて、朝廷に反逆した豪族だよ」と簡単に説明をする。M君は「平将門みたいな感じの人か」とうなずく。古くはローマの剣闘士スパルタクス、日本では明智光秀や天草四郎など、反逆者と呼ばれる人物たちは言い知れぬ魅力を秘めている。千方は彼らに比べると、流石に知名度は劣るがファンタジー小説やゲームなどに登場することもあり、意外と若い世代に名を知られている。

たわわに穂を実らせた家城神社近くの麦畑

「リバーパーク真見」近くの橋

 その看板のすぐ近くには「リバーパーク真見」。豊かな自然の中、気軽にバーベキューや川遊びも楽しめるため、夏になると大勢の人たちで賑わう。興味津々のМ君を連れて、軽く公園内を散策。一通り回ったあと、川べりに自転車を停めて、しばし目をつむる。そして、川のせせらぎを耳にしながら新鮮な空気を胸いっぱい吸い込むと、どれだけ文明が発達しようとも人間は自然の一部であることが実感できる。このまま、いつまでもゆっくりしていたいが、そうもいかない。名残惜しいが公園を後にする。
 さて、この先はいよいよ美杉町。まだまだ今日はこれからが長い。(本紙報道部長・麻生純矢)。