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7月2日10時頃。助手席に座るM君はひどくご立腹だった。「昨晩、タイヤ交換をしてたんやけど、自転車屋の店員にタイヤを見てもらいながら買った交換用チューブの大きさがまるで合わなかった。何も分からない頃に買ったから、こっちも悪いけど、一言いわないと気が済まない」と腕を組んでむくれている。
「それ買ったのいつ?レシートはとってあるの?」と私は冷静に問いかけるが「だいぶ前だし、もうレシートもないけど関係ない」と全く意に介さない様子。その自転車屋は、めざすべき美杉町とは逆方向。タイムロスだが、どうにも腹の虫が治まらなさそうな顔をしているM君を見て、仕方がなく車を走らせる。
店に到着すると「ちょっと車の中で待っててくれ」とM君は勇ましく店内に乗り込んでいく。しばらくすと、若い店員を引き連れ車のキャリアから自分の自転車を下ろす。更に5分ほど後に再び自転車を乗せ、助手席に戻ってきた。
来たときよりも幾分表情が和らいでいたので、一応どういうやりとりがあったのかを確認する。やはり、チューブは、購入から日数が経ちすぎているので、返品は断られたそうだ。その代わり、工賃を割引してもらい、チューブごとタイヤ交換をしたそうだ。怒り心頭のM君を短時間で納得させた相手の交渉力は中々のものであったのだろう。
なぜ長々と、この前段を書いたのかというと、返品できなかったチューブがこの後、思いもよらない活躍を果たすからである。
お待たせしたが、いよいよ本編だ。今回は津市美杉町のJR名松線の終点である伊勢奥津駅前からスタート。周知のとおり現在はJR名松線の家城より奥が運行休止となっているため、この駅に電車がくることはない。大部分を美杉町内で撮影した映画『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』でも、電車が登場するシーンはやむを得ず、岐阜県の明知鉄道で撮影されている。劇中でもかなり印象に残るシーンだけに、これは少し残念。
駅のすぐ横には出来たばかりの伊勢奥津駅前観光案内交流施設ひだまりがある。静まりかえっている様子だったので、近づいてみると水曜定休。これもアポなし旅の宿命。巡りあわせと諦めるしかない。
そのすぐ横には、全国的にも現存しているのが珍しいというSLの給水塔がある。今ではツタが絡まり、すっかり古びてしまっているものの、それがかえってノスタルジックな雰囲気を際立たせている。
用心深いM君の綿密な自転車チェックも終わり、準備も整ったので、いよいよ出発。天気予報を見ながら雨が降らないか心配していたが、薄い雲で日差しが和らぎ、丁度良いくらい。最初の目的は「川上山若宮八幡宮」で、ここから片道6㎞ほど。私たちは意気揚々とペダルをこぎ始めた。(本紙報道部長・麻生純矢)
2014年7月10日 AM 4:55
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