「お母さん、ぼく野球がやりたい!」で始まった球児の母の道。
 子供たちの夢に向かう姿に魅せられて、いつの間にか私も同じ夢を描いていました。今年、次男が高校三年生になり「最後の夏」球児の母、最終章となりました。
 ONE FOR ALL ALL FOR ONE
 苦しい練習も苦しい試合もみんながいるから乗り越えられた。もうムリだと思っても、みんなが手を差し伸べてくれた。親元を離れて寂しくても、監督に地元に帰れと怒鳴られても、涙がこぼれ落ちても一人じゃない、みんながいるから乗り越えてきたんだ。
 ご存知の通り、高校野球とは厳しくて熱いど根性の世界です。そんな高校野球生活はたったの2年と3カ月。長い人生の中では、一瞬に過ぎ去ってゆく。だから毎日必死に白球を追いかけることができるのです。夢叶うまで…。
 小さい頃から甲子園という夢の舞台を目指し、ひたすら頑張ってきました。休日なんかありません。雨の日も雪の日も…夢の舞台を目指して歯を食いしばってきました。
 その集大成が高校野球なのです。だから後悔なんかしたくない!今を必死に生きる!自分を信じ、傷だらけになっても必死に野球をする!
「俺たちの青春みとけ」
これが高校野球なのです。
 そんな球児たちに心打たれない親はいない。そして周りの人々も魅了する。高校野球マニアの人達が地元新聞片手に監督さながらのアドバイス、どの試合に行ってもいる女子たちの追っかけや黄色い声援。そんな周りの人たちが球児たちのやる気を上げてくれます。
 人々をここまで虜にする高校野球、少しは興味湧いてきませんか?
 どんなスポーツにも魅力はありますし、そこには色々な物語があると思います。たまたま息子が野球をやっていただけで、陸上でもサッカーだとしてもキラキラ輝く少年たちのサポートをし、ずっと支えてきたと思います。だけど…
 やっぱり私は野球が大好きです。野球を通じ色々な事を教わりました。私の友達の大切な息子が高校一年生の時に打球が頭にあたり生死を彷徨う大手術をしました。
 その2年後、最後の夏の大会で彼は、一打席目にホームランを打ったのです。グランドに立っていることは奇跡だと思いました。でもそこには苦しいリハビリと自分を信じた強い心、そして何よりも大切な母のために復帰できたのです。
 このホームランボールは彼のありったけの「ありがとう」という言葉と一緒に母の手に渡りました。このような感動場面に携わる事ができ、人間の強さを知りました。
 そして私が彼らを誇りに思うことは周りの人々への感謝の気持ちを常に持って野球をしているということです。支えてくれた人たちに必ず恩返しができるようにと。球児たちは野球を通じて人生の大切なことを学んでいます。
 このような感謝の気持ちはグランドに足を運べば目に届きます。大きな声での挨拶や、気持ちを込めてのグランド整備、そしてボール磨き。この様な雑用は気持ちがないとできません。球児たちはひたむきな心で日々感謝し雑用をしています。
「技術を磨く前に人間を磨け」
 ある有名な監督さんの名言です。高校野球は人間育成です。日本人の伝統のスポーツ野球。伝統を守り続けるから厳しくもあり古くもありますが長く愛されているのは確かです。
 また本年度の第96回全国高校野球選手権大会では三重高校が県勢として初となる本大会の頂上決戦が脚光を浴びました。このようなプレッシャーの中で、強豪校相手に必死に食らいついた選手たちに県民は心揺さぶられ、熱くなりました。
そして国民の多くが決勝戦に大声援を送ったことでしょう。
 この熱戦や快挙は三重県の高校野球史と多くのファンの胸に刻まれました。高校野球がなぜこれほどまで見る者の心を打つのでしょうか?
 それはここまでの道のりが険しかったことをみんな知っているからです。
そして…
 高校野球に次はないからです。
(片田商事チーフアドバイザー)