10月4日、㈱赤塚植物園=津市高野尾町=所有の栽培見本農場「ヒーサーの森」で、産学連携による『第14回・地域が応援するキャリアアップセミナー』がある。県内の中高生たちが里山に住む昆虫や植物の調査や、二酸化炭素量の測定と共に、里山の保全やビジネスへの活用などを学ぶ。更に、ユネスコが推進する持続可能な開発のための教育「ESD」を実践し、浸透させていく絶好の機会としても注目される。

 

ヒーサーの森でのセミナー事前学習の様子

ヒーサーの森でのセミナー事前学習の様子

 同セミナーは、地域の未来を担う中高生に、進学などで都会に出たとしても、将来的には三重県や津市で活躍してほしいという願いを込めて三重大を中心とした産学連携で開催してきたもの。主催は同セミナー実行委員会。
 今回のテーマは「里山の生物(植生・昆虫)と持続発展教育(ESD)」。共催の三重大・名古屋産業大学・三重県教育委員会・㈱赤塚植物園の連携による実践的な環境学習を行う。
 メインの会場となるのは赤塚植物園の栽培見本農場『ヒーサーの森』。豊里ネオポリスの奥に広がるこの場所では同社の主力商品であるシャクナゲを始めとする様々な植物の試験栽培などが行われている。また、広大な敷地は里山として行き届いた整備がされており、植物や、そこに集う昆虫など生物の種類も豊か。環境学習を行うには、この上ないフィールドといえる。
 また、それら環境学習と共に大きなテーマとして掲げているのは、ユネスコが世界で広めている持続発展教育の「ESD」。それは環境だけでなく、エネルギー・防災・生物多様性・文化・国際理解学習など多岐に渡り、環境・経済・社会の統合的発展を目的としている。現在、文部科学省と日本ユネスコ国内委員会は全国の学校に対し、ユネスコスクール加盟を呼びかけており、ESDの推進拠点を増やす取り組みを行っている。
 セミナーでは最初に、㈱赤塚のグループ環境事業部の田形博司部長や名古屋産業大学の村上健太郎准教授、岡村聖准教授、三重大の朴恵淑副学長らから①企業の歴史や取組み②里山の植生や植物の能力について③環境問題とESDについて…を参加者たちが学ぶ。
 その後のフィールドワークでは、参加者たちは、選択したコースごとに分かれて学習。テーマの内容は、ヒーサーの森の中の豊かな植生を観察するコース、里山を使ったビジネスを構築し、どう発信していくかを考えるコース、様々な地点のCO濃度を調査し、その理由を分析するコース、昆虫や土壌生物の観察などを行うコースとなっている。そして、最後に得たことをグループ討議しながら、交流学習を行うという流れ。
 名古屋産業大学の伊藤雅一学長は「産学連携だけでなく、大学間や高大連携に加え、台湾の大学からも見学にくる。観光や産業だけでなく、学習面でも三重県と台湾が連携を深め、より広域な環境学習が行えれば良い」と語る。
 この事業は11月に名古屋で行われる「ESDに関するユネスコ世界会議」の協賛事業として行われるだけでなく、この成果を県下でも三重大学が県下のユネスコスクールと連携して「ESDin三重」にも繋げていく。それを踏まえ、三重大の朴副学長は「セミナーを通じて、持続可能な開発のための教育であるESDへの理解を深めていく」と話している。
 赤塚植物園では、ヒーサーの森を更に発展させ、地域活性化に繋げる計画がある。日本は平成22年のCOP10でも里山の保全と活用を国際的に訴えており、津市に実践的な学びの場があることの意義は大きい。未来を背負って立つ中高生たちが、これからの地域や世界をどう発展させていくのかを考える「ESD」を学ぶという意味でも、今回のセミナーは大きな役割を果たしそうだ。