10月31日、日銀による追加緩和が実施され、日経平均は7年ぶり1万7000円台を回復、2日で1200円の上昇と東証1部売買代金も5兆円を超えました。昨年4月の量的金融緩和実施時は3日で830円の上昇に留まり今回は大幅な上昇となっています。
 追加緩和の内容は日銀による長期国債買い入れをこれまでの年間50兆円から80兆円、株式ETFを年1兆円から3兆円、JREITリートを年300億円から900億円の3倍とそれぞれ大幅に増加しています。 今回市場は追加緩和のタイミングと規模において予想していないポジティブサプライズ(驚き)の反応を示しています。
 米国が10月29日に量的金融緩和終了を宣言した後だけに衝撃的でした。サプライズは世界にも波及し、NYダウ195ドル高と9月の最高値を更新し、欧州市場でも1%から2%の上昇、アジア株も軒並み高くなっています。為替も1ドル115円台を付け、その後、116円台まで上昇しています。
 日銀が追加緩和に踏み切った背景には、家計消費が9月まで6か月連続マイナス、消費の減退から機械受注や鉱工業生産指数の停滞、原油価格の大幅下落によるデフレ脱却に不都合なリスクなどがあります。ただし今回の実施で日銀は金融政策の重要なカードを使い切ったとの感があります。
 最近の金融商品の変化として、9月以前の世界的なリスクオン相場でも商品・新興国債券・ハイイールド債・小型株の4つの資産のパフォーマンスが既に低迷しており、これは世界的な流動性のトレンドの転換を予測していると思われます。特に商品の中で原油価格は2011年以来の安値まで下落、原因は世界的な需要の減退特に中国や欧州の景気低迷によるものです。
 ドル独歩高により割高感が出たドル建て原油価格を売る動きや生産国が自国通貨安で輸出価格を下げやすくなっていることにも要因があるようです。
 通貨ではドル高が進み、世界の他国通貨の下落を招いています。特にロシアやブラジルなど新興国通貨の下落が激しくなっています。これらの国は自国通貨安により輸入インフレが進み物価が上昇、それを抑制するため金利引き上げを繰り返した結果、景気低迷を余儀なくされるという悪循環に陥っています。今後も新興国経済の悪化が問題になってきます。それ以上に経済圏の大きな欧州や中国の景気低迷も更に大きな問題点になります。
 日本も4月の消費増税後に景気低迷しています。12月上旬に判断される予定の消費再増税は今回延期されるため、更なる景気悪化は回避されましたが、今後も消費増税の影響と円安による物価上昇が個人消費を低迷させます。
 今後の世界景気において米国経済だけが好調さを持続できても、それ以外の主要国の景気が低迷する中で一定の状況が保てるのか疑問が残ります。日本と欧州の金融緩和が更に拡大する中、米国は来年半ばにはいよいよ金利引き上げが実施されようとしています。その為、ドル高とユーロ円安が更に進むと思われます。米国は景気回復により、日欧は金融緩和により、今後も株価上昇のシナリオが推測できます。しかも米国大統領選挙の前年である来年2015年は過去の経験では株価上昇が起きやすいと云われています。
 1932年から2013年の各年を4つ(大統領選年・翌年・中間選挙年・大統領選挙前年)に分けると大統領選の前年16%、中間選挙年7%の上昇率が大きくなっています。
 ここで注意点として、来年以降、米国株の上昇が続いたとしても、日経平均は昨年や今年、新高値を更新してもその後の下落も大きく、米国株のように一本調子の上昇にはならないと思われます。6年間続いた世界的な金融緩和時の金融商品は、株式・債券・リート・商品全て時期は違っても上昇してきましたが、今後米国の金融引き締めにより金融商品の騰落が徐々に明確になってきます。
 来年半ばの米国の金利引き上げ前には債券関係の商品は処分しておく事が賢明です。金利コスト増にマイナスのリート関係の商品も2番目の処分の対象になります。残る株式がポイントになります。
 為替はドル高円安になる為にドル建て商品が良いと思われます。ただし1ドル120円台からの買い付けはやめた方が良いと思われます。しかも円安が更に進んでも、円安のメリットとデメリットの差が出て、輸出に強い製造業に対し輸入インフレによる原材料費のコスト増に悩まされる非製造業の株価騰落の明暗がくっきり出るため、銘柄の選択が大事になります。また相場の変動が今年以上に激しくなるため、売買タイミングも重要になります。
 今後もしっかり経済環境の変化を把握し、投資のパフォーマンスを上げてください。今後も十分にチャンスはあります。
資産運用アドバイザー  宮 崎  英 壽