生活保護に至る前の段階にある人々の支援強化を目的に、来年4月1日から施行される「生活困窮者自立支援法」。津市でも現在、同法に基づく相談支援事業などの実施に向けて準備を進めている。対象者の就労や、その他の自立に関する相談支援を目的としたプランの作成などの事業が展開される予定だが、支援内容は多岐にわたるため、意義のあるものとするには、市と地域の支援団体などとの連携も非常に重要な要素になりそうだ。

 

 

支援事業のPRを行う長谷山荘の利用者たち

支援事業のPRを行う長谷山荘の利用者たち

国がこの法律の施行に乗り出した背景には、生活保護制度の見直しがある。年々、支給が膨らみ続ける中、問題となっている不正受給者の防止と共に、就労が可能な者に対しては、今まで以上に綿密な就労支援を行うこととしている。また、生活保護受給には至っていないが、失職などで自立が難しくなった「生活困窮者」に対する支援も行い、結果として生活保護費の支給抑制も目的としている。 法が施行される4月1日より、全国の福祉事務所を設置している自治体(市には設置が義務付られている)は、生活困窮者を対象とした「自立相談支援事業」(就労やその他の自立に関する相談支援、事業利用のためのプラン作成など)と離職により住宅を失った生活困窮者に対して家賃に相当する「住宅確保給付金」(有期)の実施が義務付けられる。さらに就労に必要な訓練を行ったり、住居のない者に一時的に宿泊場所や衣食の提供を行うことなども任意事業として実施できる。
 現在、津市も施行に向けた準備を進めている。具合的には、被生活保護世帯のサポートを行っている援護課の相談機能を拡張し、生活困窮者を対象とした窓口を開設する方向で調整。
 簡単に説明すると、相談者を就労支援が必要なのか、生活保護が必要なのかなどをこの窓口で判断し、必要な対応を行うという流れだ。
 津市でも平成25年度の生活保護支給が50億8000万円と非常に大きく、毎年増加の一途を辿っているだけに、事業の成果が期待されている。しかし、懸念材料もなくはない。
 現在、援護課に配置されている被生活保護世帯とのやりとりに当たるケースワーカーも、一人当たり100人以上と国の適正基準の80人を上回る数字を受け持っており、その職務は非常に多忙となっている。
 新事業でも、ただ相談を受けてプランを作成するだけでなく、実際の就労という成果にまで繋げようとすれば、相談者一人ひとりを綿密にサポートする必要性があり、ある意味では、今まで以上の努力が必要とされると言える。
 ただし、市の力だけでは限界があるので、施行前のモデル事業などを行っている先進地では、地域のNPOなどと綿密に連携しながら対象者の支援に当たっているケースが多い。
 津市内でも、津市片田長谷町にある救護施設「長谷山荘」で、施行に先駆けて生活困窮者を対象とした相談を社会貢献活動の一環として行っている。同施設には、障害を持ち、経済的な理由からも自立の難しい人たちが暮らしている。11月23日にあった「第16回ひろがれ友情ひろがれ仲間~知的障害者のつどい」など、様々なイベント会場でもPR活動を行っている。
 このほかにも、施行後に必要があれば、地域に根差した様々な機関や団体との積極的な連携が必要となるだろう。
 家族や地域とのつながりが薄れる中、今後、生活困窮者の増加は確実。負の連鎖を生み出さないためにも、この施策の意義は大きい。それだけに行政の本気が問われるのも事実だ。まだ施行までに少し時間はあるが、津市の取り組みに期待したい。

「おふくひめ」号の前で肥育農家の永田さん(右)と朝日屋の香田社長

「おふくひめ」号の前で肥育農家の永田さん(右)と朝日屋の香田社長

 11月23日、世界のブランド『松阪牛』の年度チャンピオンを決める『第65回松阪肉牛共進会』が松阪農業公園ベルファームで開かれた。主催=三重県・松阪市・津市など関係市町ほか関係農業団体。
 厳しい最終予選を勝ち抜いてこの日の本選に出場した50頭の特産松阪牛は、兵庫県から買い付けた子牛を松阪牛肥育地域で肥育農家が手塩にかけ、採算を度外視して900日以上も肥育した未経産の牛。毛並や肉付きなど、どれをとっても素晴らしい名牛が揃った。
 早朝から県畜産研究所の職員ら5人が厳正なる審査した結果、チャンピオン牛の優秀賞1席には松阪市大宮田の永田憲明さん(47)肥育の『おふくひめ』号=肥育日数1110日、688㎏=が輝いた。永田さんは3回目の1席獲得。
 今回は、松阪市政施行10周年記念大会ということもあり褒賞授与式と功労者表彰式が行われた。その中で審査長の県畜産研究所大家畜研究課・岡本俊英主任研究員が、「平均体重660㎏とボリュームのある牛が揃っており、どれも普通とは比べものにならない牛ばかりだった。優秀賞1席の牛は身体のバランス・肉付き・体表の滑らかさなど、どの審査員が見ても申し分がなかった」と講評した。
 その後、大勢のギャラリーや報道陣が注目する中で行われたせり市には、津の朝日屋、松阪の和田金、牛銀本店などが参加。審査員の評価とは、一線を画した精肉業者ならではの目利きでせりを繰り広げた。
 優秀賞5席の『ふくみ』号は、332万円で朝日屋が落札。4席『こすもす』号は340万円でマックスバリュ中部が落札。3席『はなひら』号は351万円で朝日屋が落札。2席『まるこ』号は400万円で朝日屋が落札。
 大トリの『おふくひめ』号は300万円からスタート。あっという間に2千万円の大台に乗ると、会場からどよめきが起こった。激しいせり合戦の末、朝日屋が昨年より50万円上乗せした2350万円で落札した。朝日屋のチャンピオン牛落札は23年連続、通算33回目。50頭の平均落札価格は283万円だった。
 今年も他を圧倒する買い攻勢で50頭のうち、24頭を落札した朝日屋の香田佳永社長(54)は「記念大会だったので、無事に落札できてほっとしている」と笑顔で話した。朝日屋が、この日に落札した牛たちは今年も12月11日からの名牛まつりで販売する。
  落札した各業者の頭数は次の通り─①朝日屋…24頭②マックスバリュ中部…6頭③牛銀本店、瀬古食品…各4頭④やき肉千力、和田金、松阪まるよし、肉の友屋…各2頭⑤マルヤス、丸中本店、柿安、焼肉野崎…各1頭。

講演する藤田達生教授

講演する藤田達生教授

 11月22日、東京日本橋の三重テラス2階イベントスペースで、一般社団法人津市観光協会と津ガイドネットの共催による歴史講演会とパネル展、津市名所写真展が開かれ、東京在住の藤堂宗家15代高正氏、弟・高幸氏も来場するなど100名に及ぶ来場者があり盛会だった。
  10時から16時まで開かれた津市名所写真展は、市内ガイド14団体が担当地域の中から自慢の名所を3箇所ずつ選んで紹介。
 パネル展は、『江戸・東京と津藩・久居藩ゆかりの地』がテーマ。江戸後期に通算4万部も売れた初の多色刷り江戸切絵図(区分地図)のうち津藩・久居藩に関わる下谷・本所・深川・巣鴨の4点を展示のうえ、両藩の各種屋敷や江戸城、上野東照宮、菩提寺の寒松院・墓地。津の津城・久居陣屋、寒松院、元は津藩染井下屋敷にあった石造物、江戸橋、深川の名工が鋳造した津観音の天水鉢など、江戸・東京と津を関連づけた解説と現況写真などB2判パネル全17枚で構成。
  また幕末、深川の津藩下屋敷で鋳造された寛永通宝鉄銭の実物や、文政元年に描かれた染井下屋敷の庭園絵巻も展示し、来場者の興味を引いていた。
  午後、1時間にわたり展示会場内で行われた主催事の講演会『江戸幕府と津藩祖藤堂高虎公』は藤田達生三重大学教育学部長・教授が講師。なぎさまち実現、アクセス船運航会社誘致に尽力した元津市助役・小林利之さんや、高虎公遺訓200カ条で知られる佐伯氏の子孫、染井下屋敷など駒込一帯を案内しているガイドらも訪れ、椅子を追加しギリギリ60席満杯の盛況。
  藤田教授は、高虎公の人となりや、関ヶ原合戦、大坂包囲網構築、大坂冬・夏の陣に先鋒・参謀として果たした役割、あるいは公武一和を推進し徳川260年の平和の礎を家康・秀忠の右腕として築いたことなどを紹介。また、今治城に始まる平和な時代の到来を見越した使い勝手の良い、城郭・城下町を含めた都市設計を行った先駆者であることも力説。参加者から「藩の成立など勉強になった」「東京でこんな講演会がある時は、ぜひ知らせてほしい」という声が寄せられるなど大好評だった。

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