久しぶりに名古屋に出かけたので、帰りにデパートに寄ってきた。夕方のデパートは明るい光に満ち、人々を引き寄せる。私もいそいそと地下の食品売り場を目指した。
 空腹時の買い物は危うい。とりどりのスイーツやきつね色の揚げ物に引き寄せられ、色鮮やかな肉やサラダの前で足が止まる。どれもおいしそうで買いたくなるが、主婦は目先の欲にとらわれてはいけないのである。家族の好きなものを、夕食のおかずになるものを、栄養のバランスを考えて。見回せば、同じように総菜を買い求める人たちがたくさんいた。きれいでおいしいデパ地下グルメなら少々値段が高くても買っていく。
 本来、食材はそのままでは食べられない。加工したり、調理したりする必要がある。近年そこを家庭の外に任せる傾向が出てきた。
 たとえば、お茶。お茶を入れることぐらい誰でもできるのに、ペットボトル入りを常備する人が少なくない。
 豆腐を加えてマーボー豆腐とか、卵を加えて具入りオムレツとか、レトルトと調味料の中間のような製品も増えた。手作り感を残しつつ簡単調理がミソ。この手作り感が重要である。
 食卓に出来上がりの総菜を乗せるのは、いかにも手抜きで後ろめたい。デパートの総菜はグルメと銘打つことでその辺りの後ろめたさを上手に薄めている。    (舞)