津市では、全国的に低迷している「国民健康保険(国保)」の収納率を近年、着実に改善させている。国保を担当する保健医療助成課では要請に応じない滞納者への差し押さえなど厳しい対応をしつつ、加入者間の平等を守っている。国は国保を現状の市町村単位から都道府県単位での運営に移行し、財政基盤強化をめざすが主な業務は市町村が担う公算が高い。制度の根幹を守る津市の取組みは大きな意義を持っている。

 

 津市の国保加入世帯は平成25年度末で約4万540世帯。保険料収入は約64億9600万円。一人当たりの平均保険料は約9万6000円で、世帯平均は約16万円。他の公的保険制度と比較すると、加入世帯の大部分が低所得者層を占めていることからも、負担の重さが際立つ。
 国保は、基本的に加入者からの保険料収入に加え、運営自治体の法定内繰り入れや国や都道府県からの交付金で運営している。加入者に74歳以下の高齢者が増えていることに伴い、医療費支出も増加。全国的にも国保財政の赤字化が深刻なな問題となっている。
 赤字が発生した場合は、運営する自治体が一般会計からの法定外繰り入れを行うか、保険料の値上げで補うしかなくなるが、問題となるのが保険料の収納率。
 全国的に収納率の低下が問題となっているが、それは行政が然るべき努力を怠ったがために招いているケースも少なからずある。保険料を納めている加入者からすれば、安易な値上げは許せないのは当然だ。
 津市でももちろん、収納率の問題は抱えており、平成25年度の滞納保険料の累積は約20億7千万円と膨大だ。しかし、近年では徴収業務に取り組む保健医療助成課の努力もあって、ここ数年で収納率を着実にアップさせている。具体的には平成21年度現年度分の保険料収納率が86・2%で滞納分の収納率が7・2%だったのが平成25年度では現年度分が同89・9%で滞納分は同21・7%まで改善した。
 その大きな要因となったのは、収税課で市税の徴収業務の経験のある職員が異動で同課に配属され、ノウハウを伝えると共に、職員の意識改革を行ったこと。それまでは〝福祉の精神〟を理由に、徴収業務には余り積極的では無かったが、加入者間の平等を守る大切さと滞納者が増えれば、結果として加入者に重い負担となって降りかかるという認識を改めて伝えた。その上で、収税課と同様に、滞納者に対する納付の催告を行い、分納制約による時効の延長を行ったり、応じない場合は財産調査による差し押さえを実施している。
 平成25年度の預金・不動産・給与などの差し押さえ額は同課が直接差し押さえたもの・他課の差し押さえをきっかけに徴収したもの・特別滞納推進室に移管したものの合計で約1億2千万円。この毅然とした対応には滞納の抑止効果もあり、結果として収納率向上に繋がっている。
 これらの成果は、全国的に見ても、素晴らしく昨年には、津市と人口規模の近い長崎県佐世保市の職員が同課を視察に訪れた。同市よりも徴収担当職員が少ないにも関わらず、成果を上げていることに様々な質問が集まったという。
 高すぎる負担や自治体の赤字運営など、多くの問題が山積している国保については医療制度改革の中で、平成30年度に都道府県に運営主体を移管し、大規模な財政支援を行う方針を打ち出している。一方、そうなった場合でも保険料は都道府県内で統一せず、自治体ごとの納付率向上への取組みや医療費抑制の取組みを反映させ、算出するとしている。つまり、徴収業務などは現行の体制が維持される可能性が高いため、今のノウハウは制度改革後も生かされることになろう。
 とはいえ、津市の国保財政は楽観視できない状況が続いており、平成25年度中に回収できずに2年の時効を迎えた不能欠損は約3億6千万円も発生。更に今年度は、一般会計から、法定外繰り入れを行わざるを得ない見込みと、予断を許さない。
 更なる収納率向上は必須で、時効が2年の保険料から5年の保険税への切り替えなど、効果的な一手もあるが、市は〝福祉の精神〟を理由に難色を示している。だが、それは加入者間の平等よりも体裁を重視していると批判され兼ねない。改めて、組織としての意識改革も課題となろう。