庭に黄色い菊の花が二つ見える。重陽を過ぎれば残菊と言われるが、新年過ぎて咲いているなら超残菊と言うべきだろうか。朝、雨戸を開ける度に小さな花がまだあるのを確認する。冬の花の命は長い。
 小さな庭には、他に花がない。辛うじて、万両の実が赤い色を添える。葉っぱの下にある万両の実は、鳥に見つけられにくいから、千両や南天の実が鳥に食べ尽くされた頃でもまだ残っている。
 我が家の庭にはもう見るべきものがないので、よそ様の庭を拝見しようと散歩に出た。生け垣の山茶花は十一月から咲いているのにまだ花いっぱい。隣には椿の蕾が大きく膨らんで次の番だと待っている。
 向こうの家にたっぷり見えるのは青々とした枇杷の葉。枇杷晩翠という言葉のままだ。その木の高いところに薄茶色の花が付いている。咲いているのか終わったところなのかは遠くて分からない。たくさんあるので、たくさんの実ができるだろう。
 ずっと前に枇杷の種を蒔いたことがある。大きくて甘い枇杷にりっぱな実が入っていて、捨てるには惜しかったから。枇杷の芽が伸び、数十センチになったところで、屋敷に枇杷の木を植えるものではないと聞いた。
 桃栗三年柿八年、枇杷は早くて十三年。結局枇杷の木を引き抜いた。あの木を残しておけば、今頃枇杷の花を見られただろうに。     (舞)