昼過ぎから降り出した雨は、夕方になってひどくなった。私はワイパーの速度を上げて、暗くなった道を自宅へ向かっていた。家で子どもが待っているわけではないが、気が急かされる。
 踏切で止められて、舌打ちをしそうになった。上り下り両方から電車が来る。三分五分がどうということもないのに、気持ちも運転も前のめり。
遮断機前の車の脇には、兄妹らしい小学生。お兄ちゃんが前で、妹が後ろ。妹は自分の傘の他にたたんだ傘を持っている。
 きっと二人で駅まで傘を届けに行くところだ。傘を受け取るのは誰だろう。パパのお迎えなら、ママが車で来るだろうから、これはママのお迎えだ。妹がママの傘を持ちたいと言ったのか。
 冷たい雨の中に、大きな傘を肩にかけて立つ二人を見ていたら、ほっこりとした気持ちになった。あの頃は世界で一番ママが好き。ママの笑顔が一番の喜び。
 そして、毎日忙しさにかまけているであろうママにとっても良い時代だ。直中にいる時には気づかないけれど、忙しい時が幸せな時である。
 踏切が開いて二人は駅の方に歩きだした。もうじき電車が着くだろう。ママが下りてきた時の子どもたちの顔が見たいと思ったが、私もそのまま車を出した。
 私の子どもたちも今頃は仕事を終えただろうか。都会の喧騒の中で何を思っているだろう。          (舞)