帽子を被った上野博士(久居駅東口)

帽子を被った上野博士(久居駅東口)

 津市久居のご出身で我々が誇りと思う、農業土木の偉人、権威者、故・上野英三郎農業博士(東京帝国大学教授・現東大)と忠犬ハチ公との「対」の銅像(日本及び世界で唯一)が久居駅東口に建立除幕されたのが平成24年10月20日。早くも2年半の歳月が流れ、三重、津久居の新名所として脚光を浴び、全国に広く発信し、地域は大いに盛り上がっております。
 更には久居駅ビル、ポルタに津市役所久居総合支所が、この一月より移転し賑わいを呈しております。また、嬉しいことに「対」の銅像建立の動きは久居一基にとどまりません。
 本年3月8日はハチ公没後80年になり、それを記念して、東京大学構内に上野博士と忠犬ハチ公の「対」の銅像が建立される事が既に東大の先生の口から発表されており、更に新聞紙上にて大きく報道され、東大のもう一つのハチ公の物語として、3月8日祥月命日の除幕式が目の前に迫っております。
 このような状況下、冒頭の見出しの通り、「粋で通な方の悪戯?」と記述しましたが、何方かが帽子を被せて戴いたのでしょうか?
 久居東口、緑の風公園入口に建立の上野博士の像は無帽です。しかし、この構図は静止像なるがゆえに動きが見えないものの、上野博士が列車から降りてきて手を伸ばすとハチ公が主人たる博士に飛びつき、抱きつき、ちぎれんばかりに、尻尾を振っているものであろうことが容易に想像ができます。
 久居の銅像が「静」であるのに対して、東大の試作像は「動」です。
 ハチ公と上野博士の「対」の銅像の第二弾の考えは間然するところなく、関係者に深く敬意を表すとともに、今春3月8日の祥月命日に行われる除幕式での公開を鶴首の思いで待つものであります。
 この度の東大のモデル(模型)は帽子を被っている構図です。そこら辺をこの(悪戯された)方は斟酌下さったのでしょうか。久居の方でも着帽の話もあり、銅像制作者の稲垣克次氏、(彫刻家・日展評議員、審査員、鈴鹿市在住)からもそのような模型の提供がありましたが、当時帽子を余り被っていなかったのではないか…との異論も出て結果的に無帽でと言う事になった経緯もありました。
 しかし、本家本元の東大の方は着帽の銅像になっており、中々格好いいですネ。又、風雨の時、顔面の汚れやらを防ぎ養生の為にも良いのでしょう。東大の銅像の制作は名古屋在住の彫刻家、植田務氏が手掛けられております。久居制作時、時代考証がいささか研究不足ではなかったかと思っております。
 今後このような第三弾、第四弾の「対」の銅像の建立が新たな創意のもと日本や外国の関係の場所に建立されんことを希望してやみません。

帽子を被った上野博士(久居駅東口)

帽子を被った上野博士(久居駅東口)

 さて、「忠犬ハチ公物語」は、読者の皆さんには既に十分ご承知のここと思いますが、ここで敢えて今一度、ハチ公と博士との心温まる絆をごく簡単に回顧し、改めて博士の遺徳を偲び、ハチ公の生涯を辿りたいと存じます。
 ハチ公は、生粋の秋田犬です。秋田県大館町(昭和26年市制施行)で大正12年(西暦1923年)に生を享けました。生後50日余りで、米俵に包まれ国鉄(現JR)の小荷物扱いで東京に運ばれました。仔犬であったハチ公にとっては長い長い旅。大正13年(西暦1924年)の一月のことでした。貰われて行った先は東京帝国大学教授上野英三郎博士です。
 博士はご存知のように、ここ久居の本村甲(現元町)のご出身です。犬好きの博士は自分のベッドの下でハチを寝かせるほど、可愛がりました。ハチもその愛情に応えて、朝には大学に出講する博士を渋谷駅まで送り、夕方には再び渋谷駅で博士を迎えました。残念ながらその主従の生活は長くは続きませんでした。
 ハチが博士の家に来てから僅かに17カ月の時、博士は大学での講義中突然に倒れられ、不帰の人となってしまわれました。
 しかし、そのことが理解出来なかった、否、理解を拒んだハチは、その後もそれまで通り朝な夕なに渋谷駅に通い、改札口から出てくる大勢の乗客の中に博士の姿を求め続けたのです。「犬は三日飼えば…」といいますが、ハチにとっては博士と共に暮らした17カ月の経験と記憶は何ものにも代え難い宝であったのです。その忠誠心が徐々に人々の心を捉え新聞にも掲載されるようになり、遂には小学校修身の教科書が採り上げるところとなり、教育の一環を担うに至りました。
 その感動的な物語の中心がハチ公であり、そのハチ公の飼主がここ久居出身の上野博士であること、そして、地元の久居の地にハチ公と博士の「対」の銅像が初めて建立できたことを、心から喜ぶものです。
 繰り返すことをお許し下さい。久居のものが「対」の銅像第一号であり、そのことを秘かに誇りに思っている今日この頃です。
 住んでいる人が誇れるまち《津久居》に。
(津市久居新町在住。上野英三郎博士とハチ公の銅像を建てる会・元代表。津商工会議所常議員)