ボートが係留された水路(雲出鋼管町)

ボートが係留された水路(雲出鋼管町)

 「久しぶりに釣りをしたくなった」「ああ、また今度ゆっくりとな」。釣りスポット『日本鋼管』を後にした私たちは国道23号方面をめざし、JFEエンジニアリング㈱の正門前を横切り、水路沿いの道を西へ。
 平日の昼間ということもあり、車通りもほとんどなく快適そのもの。水路に浮かぶ無数のボートも、のどかな風景だがふと疑問が頭に浮かんでくる。船たちをじっと観察すると、漁船が大半を占める中、プレジャーボートらしき船が混じっていることに気付く。職業病だが「もしかしたら、漁船じゃないのは不法係留なのかな」と、気になり始めたのだ。流石にこの場で追及することはなかったが後日、この水路を管理する県に確認したところ、やはり予想は当たっていた。
 少し話はそれてしまうがこの水路が出来た経緯を説明する。大規模な埋め立て地である雲出鋼管町を造成した昭和40年代に、この水路の少し南側には元の海岸線があり漁師たちが船を係留していた。どうもその代替えとして、漁船を係留する簡易港湾的な役割を果たすためにつくられたもらしい。今では、ここを管理する漁協もなく、いつの間にか漁船以外の船が係留されるようになったらしい。何気ない風景の中にも、好奇心というフィルターを通せば、明らかになる様々な問題が潜んでいるのだ。
 つい、長くなってしまったが、話をサイクリングに戻そう。私たちは件の水路の脇を抜け、雲出川左岸浄化センターを南進。無数の太陽光パネルが並ぶメガソーラー発電施設付近のT字路を西へと曲がる。やがて川を渡れば、すぐに国道23号だ。愛知県と三重県を結ぶ大動脈を北へと進んでいく。
 この道は自転車が、どう走るのが正解なのかいつも分からなくなる。最近、自転車が加害者となる悲惨な事故が続いているため、周辺法が整備され、搭乗者の責任を問う流れになっている。自転車は免許もいらず、誰でも乗れる便利な乗り物である反面、然るべき整備を行わない車両や危険な運転を繰り返す搭乗者が後を絶たないという背景もあり、この流れにも頷ける。
 その一方、自転車は法的には軽車両扱いで原則車道を左側通行と言われても、スピードの乗った自動車が多いここの車道を走るのは相当危険だ。歩道の走行が許可されている箇所でも幅が狭く、パンクの原因となるガラスや金属片が散らばっていたりと、とても自転車の走行に適した環境とは言い難い。法整備の趣旨には賛成だが、同時に自転車が事故を起こしにくい環境整備も進めてほしい。
 もちろん、それに伴った搭乗者の意識改革も重要となる。まずは、逆走などの危険行為を見かけるのが日常茶飯事の現状を変えなければならない。私たちのような趣味で自転車に乗る人間は、その辺りを意識している者が多いが、学生やお年寄りなど、生活の足として自転車が欠かせない人ほど交通ルールやマナーを意識していないケースが多くみられる。教育も含めた大きな流れで人々の自転車に乗る意識が変わっていけば、自ずと環境も変わっていくかもしれない。(本紙報道部長・麻生純矢)