津市内屈指の大規模墓地「偕楽霊園」=津市観音寺町=の一角にある竹藪(市有地)には、納骨後に不要となった骨壺を捨てていく者が後を絶たない。また、近くの池の底からも不法投棄と見られる大量の骨壺が発見されている。それら骨壺は既に市が処分したものの、再び繰り返される可能性は高い。倫理観の乱れと世相の変化が嘆かわしい事態を招いている。 

無残に捨てられた骨壺…故人の氏名・命日・享年も書かれている

無残に捨てられた骨壺…故人の氏名・命日・享年も書かれている

竹藪に散乱している骨壺たち

竹藪に散乱している骨壺たち

 地域住民の話によると、偕楽霊園内の市有地の竹藪に、骨壺が捨てられ始めたのは約10年前。いつの間にか1つ捨てられ、2つ捨てられ…。気が付けば、10個余りの骨壺が散乱するようになっていた。
 もちろん、遺骨は墓に収められているので骨壺の中身は空だが、雨ざらしで泥にまみれた骨壺が並ぶ様子は異様。中には故人の氏名や命日などが書かれているものもあり、現代社会の倫理観の乱れを象徴するかの如き様相を呈していた。
 骨壺の一般的な処分方法は、弔いの一環として故人の菩提寺・葬儀業者・墓地を管理する石材店に使用後の骨壺を引き取ってもらうというケースが多い。時勢の移り変わりもあり、通常の葬儀を行わない家庭も増えており、それらの手段が使えない人を対象に1個数千円ほどで処分を請け負う業者も出てきている。
 津市は、遺骨を運んだ骨壺は、なるべく菩提寺・葬儀業者・石材店などを通じた処分をしてほしいとしているが、どうしても自分で処分しなければならない場合は、砕くなど骨壺と分からない状態にした上で「燃やせないゴミ」として回収をするとしている。
 この竹藪の中の骨壺は当社の取材後に市が処分をしたが、広大な霊園の周囲の茂みを観察してみると、数は少ないが所々に骨壺が打ち捨てられている。このような個人の倫理観の乱れに端を発する問題以外にも、この霊園では更に大きな骨壺を巡るトラブルも発生している。昨年8月、この竹藪のすぐ近くにある霊園内の池を清掃していた地域住民から市に「池の底から、大量の骨壺が出てきた」という通報があった。すぐに駆け付けた市職員が回収したところ、個数は記録していないが砕いても小さい土嚢袋5つ分の量になったという。
 真相は闇の中だが、この地域住民は定期的に池や周囲の清掃を行っていることを考慮すると、長い時間をかけて数が増えていった前述の竹藪と違い、一度にまとめて捨てられた可能性が高い。更に、個人がここまで大量の骨壺を集めることは難しいため、悪質な業者による不法投棄の可能性も否めない。
 市は、これらの件に関して捨てた者を追及するつもりはないとしているが、葬儀に対する考え方や家庭の在り方が急激に変化する中で、何らかの呼びかけや対策を行わない限り、今後も同じ行為が繰り返されてしまうばかりか、万が一、遺骨が入ったままの骨壺が捨てられる事態でも発生すれば目も当てられない。
 まして、この場所は花見の時季には大勢の人が市内外より訪れる津偕楽公園より近く、その時季に合わせて津市が臨時で開放する駐車場の真裏に当たる。ある意味では津市の印象を決めるこの地域で、このような問題が発生していることは看過できない事実である。
 もちろん、これはこの霊園に限った問題ではく、問題の根本にあるのは人々の倫理観の乱れと、葬儀に対する価値観の変化の表れに他ならない。今一度、市民ひとり一人が自身の行動を振り返り、死者を弔うという行為の原点と向き合うことが必要とされている。