㈱赤塚植物園、三重大学、高野尾地区の関係者らが「高野尾地区活性化推進協議会」を設立し、新しい農業の理想郷をめざす『花と緑と水の里』(津市高野尾町、事業主体㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重)を来年6月にオープンさせる。入札で建設業者も決定し、着々と実現に向かっているが施設面の充実と共に斬新なソフト事業や施設周辺の水田を活用した「花街道」の構想も打ち出すなど、今後の進展にも注目が集まる。

 

 計画は、㈱赤塚植物園の赤塚充良会長が、特産品のサツキの需要低下と農家の高齢化や後継者不足によって衰退する高野尾地区の活性化を地域住民から持ちかけられた事に端を発する。
 そこで「高野尾地区活性化プロジェクト」を立ち上げ、同社の持つ土づくりの技術を核に、環境に優しく持続可能な方法で他の産業と遜色のない収入が得られる新しい農業の理想郷を生み出すべく歩み始めた。具体的には転用した農地を含む3万2000㎡の土地に、出荷会員は最大700名の予定で地域の農産品や加工食品などを販売するファーマーズ・マーケット(農産直売所)を中心に、同じく地域の農産物を使ったフードコートや、研修室などを備えた「花と緑と水の里」を建設。更に隣接する同社の栽培農園で広大な敷地に多様な植物が植生する「レッドヒルヒーサーの森」との相乗効果で大きな集客をねらう。昨年9月に事業主体となる㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重を設立。今年の5月9日、高野尾地区活性化推進協議会の発足会も行われ、赤塚植物園、三重大学、地域住民らによる団結を誓った。一連の整備には農水省の「農林漁村活性化プロジェクト支援交付金」を活用する。
 施設の建設業者も入札によって決定するなど、来年6月のオープンに向け、着々と準備が進んでいる。計画の目的には①地域コミュニティの再生②地域ブランドの創出③新規就農者の発掘④若者の定住促進などが掲げられ、国の地方創生への寄与をめざすだけに、ハードは重要だが、より注目すべきなのが多彩な企画を用意したソフト面だ。
 具体例を挙げると、オープンに向け、新たな名物とすべく食用花(エディブルフラワー)を使ったオリジナルスイーツレシピづくりを県内の大学生や高校生と共に行う(6月13日と7月25日イベント実施)といったソフト事業を展開。更に名古屋産業大学との連携でヒーサーの森に設置したCO2濃度測定装置を活用しながら植生調査などを行い、台湾の学生とも自然学習を通じた国際交流も実施するなど、若者が農業や自然に対する関心を持つ環境づくりにも寄与。また、全国からの集客も望める芸濃インターのすぐそばという好立地を生かし、自施設だけでなく、津関線で結ばれた高田本山専修寺や多数の企業が進出している中勢北部サイエンスシティとの面的な繋がりも強化。㈶津市スポーツ協会と連携し、医療的な観点をからめながら、これらのエリアを歩く健康講座も実施する。
 とりわけ、先進的な取り組みとしては三重大の「みんなで農業の未来を考える会」(略称のみかい)も開催。三重大の若手研究者と農業者やJA職員らが本音で意見を交わしながら、現場を知らない三重大の若手研究者に実践の場を提供すると共に農業者も地域問題を解決するヒントや六次産業化に向けたヒントが得られる場とする。
 そして、赤塚会長が、施設の整備と並び、強い思いを持っているのが施設周辺の水田に季節の花を植える「花街道」構想だ。美しい花とふれあえる広大な花畑を整備し、施設の集客に繋げるだけでなく、農家の高齢化に伴い増加している不耕作地の増加にも歯止めをかける。また、来場者に花を販売する新たなビジネスも生まれるため、地域の高齢者の新たな生きがいを得られるなど、地域問題解決の手段として活用。花街道について赤塚会長は「子供の頃の原体験の風景を再現したい」と意気込む。
 赤塚植物園や三重大の持つ技術や知識と地域住民の力が結びついた農業による地域活性化。実現に向けた今後の進展にも注目だ。