小川さん挨拶 三重テレビ放送=津市渋見町=の『ハンセン病に対する差別解消にむけた報道』が、NPO法人放送批評懇談会が優秀な番組・個人・団体を顕彰する「第52回ギャラクシー賞」の報道活動部門で見事、優秀賞に輝いた。同局のギャラクシー賞受賞は今回が初。
ハンセン病は「らい菌」による感染症で、症状は末梢神経の麻痺や皮膚のただれなど。現在では治療方法が確立している。しかし、昔は、顔や手足の変形など外見からわかる後遺症が残る場合があったことや、「遺伝病」「伝染性が強い」と誤解されていたことなどから、患者やその家族が偏見・差別を受けた。そして日本では、1900年代から国の隔離政策により患者が各地のハンセン病療養所に強制的に収容され、偏見や差別が一層助長された。
隔離政策が終了した今も、療養所の入所者の多くは、治癒しているが、社会に残る偏見や自身の高齢などの理由で、退所や故郷で暮らすことができないという現状がある。
一方、同局では、2001年にハンセン病国家賠償請求訴訟で原告勝訴の熊本地裁判決が出されたのを機に、今回の報道を企画。小川秀幸報道制作局長(49)らが丹念な取材を行い、01年~14年にドキュメンタリー番組5本と、ニュース番組内の特集を放送した。
これらの番組では、隔離収容に携わっていた元県庁職員が、岡山県の療養所で暮らす三重出身の元患者と交流し絆を結ぶ姿を報じ、人間としての在り方を問いかけた。また戦争中、〝国の役に立つか立たないか〟という一面で人間の価値が判断されていた時代に患者の隔離収容が進んだ歴史を振り返り、現代でも経済活動などで効率のみを優先した場合に起りうる弱者排除の風潮に警鐘を鳴らした。
さらに、三重県が各地の療養所で暮らす人を対象に年1回実施している「里帰り事業」で、参加者の多くが、故郷そのものには帰ることができず観光地巡りが中心という現状を克明に伝え、その原因である偏見がない社会をと訴えた。
小川さんは、「この受賞をきっかけに、皆さんに、現在も三重県出身の53人が全国の療養所で暮らしていることや、ハンセン病への差別・偏見が残っていること、差別を受けるのはおかしいということをまず知ってもらいたい」と話している。