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東海・南海・東南海地震の連動による大地震が将来的に発生することが確実視されている。阪神淡路大震災では死因の80%が建物の倒壊というデータが出ているが三重県は近隣県と比べると住宅の耐震化が遅れている。そんな中、耐震化推進に向けて、様々な活動に取り組んでいるNPO法人・三重耐震マイスター倶楽部理事長の斎藤弘郎さん=斎藤建設㈱代表取締役=に話を聞いた。(聞き手は本紙報道部長・麻生純矢)
──まずは倶楽部のことを教えてください。
斎藤 2011年に設立した当クラブは建築関連企業の正会員11社、賛助会員8社が参加しており、いずれもNPO法人・すまいの構造改革推進協会の会員。皆が「住まいは家族との生活と命を守るものでなければならない」という当倶楽部の信念に共感し、既存住宅の耐震化を行うための耐震診断や耐震補強技術の向上、一般への耐震に関する情報提供などを実施。三重県の防災対策本部や三重大学の自然災害対策室との連携をめざしながら、啓蒙活動に取り組んでいる。
──県内の各自治体でも住宅の無料耐震診断や耐震化の補助事業を行っていますが、違いはなんですか。
斎藤 自治体の実施する住宅の耐震関係の事業は、建築基準法が改正された昭和56年5月末以前に建てられたものが対象。私たちは主に、それ以降から更に厳しい基準が設けられた00年の間に建てられた建物をメインターゲットとしている。阪神大震災や東日本大震災でも昭和56年以前の建物の危険性は指摘されているが、ちょうど狭間に当たるこの期間に建てられた建物は古いものだと築30年以上になる。間取りによる強度の不足や、耐震金具の緩み、シロアリの被害、水回りの柱の腐朽、経年劣化などで耐震性が下がっている可能性がある。こういった住宅は自治体の無料診断や補助の対象外だが、耐震診断を受け、然るべき処置を受けるのが望ましい。
──なるほど。ただ、自治体の無料診断を受けた後に、補助を受けられても高額の工事費の見積もりを見て、耐震化工事を諦めるケースも多いと聞きます。
斎藤 自治体の補助を受けるには昭和56年以前の建物に、耐震診断で住宅の強度を示す評点が震度6強の地震でも倒壊を免れる1・0以上になるように工事する必要がある。古くて耐震性の低い家でその基準を満たそうとすると、構造体を補強するだけでなく重い瓦を軽量の瓦に葺き替える必要もあり、どうしても工事費が高額になってしまう。
──補助制度対象の住宅でも、そんな現状ならば、対象とならない住宅の耐震化は費用面でも大変では。
斎藤 評点1・0はとても重要な基準で、各自治体が行っている補助制度の意義は大きいと思う。ただ経済的な事情などの制約がある場合、必ずしもその数値だけにこだわる必要はない。例えば、震度6弱で倒壊する危険性がある評点0・4の住宅ならば、相当なダメージは受けるが辛うじて倒壊せずに済む評点0・7まで引き上げるだけで命を救うという意味では非常に有効。工事費も抑えられる。施主の要望に合わせた柔軟な対応も大切だ。
──耐震化にも様々な方法があるというのは目からうろこでした。そちらに耐震化をお願いする場合の流れを教えてください。
斉藤 まずは、当倶楽部の耐震診断(費用2万円)で、住宅のあるエリアを担当する会員企業の者が入念にチェックをする。その時に集めたデータを、耐震診断ソフトに入力することで、揺れに対して弱い方向や、どのような耐震補強を施せば良いのかが分かるデータをお見せする。その後、予算や要望に合わせて様々な提案をさせて頂く。リフォームと同時に耐震補強を考えるのも合理的だ。
──東日本大震災より4年が経過し、耐震化への関心が少し下がったように思えますが、近い将来に東海・南海・東南海の連動大地震がほぼ確実に発生すると言われています。そんな中で先日の小笠原諸島沖の地震でもう一度気を引き締めた人も多いと思います。
斎藤 私も長年建築業界に係わった者の恩返しという気持ちで、一人でも多くの命を救うために活動している。住宅の耐震性に少しでも不安のある方は気軽に相談してほしい。
──ありがとうございました。
問い合わせ0120・152・502。
2015年6月19日 AM 11:47