この4月の改定に伴い、津市の65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の基準額(月額)が6167円に値上がりした。全国平均5514円と比べると高額であり、団塊世代の高齢化に伴い、保険料の更なる上昇が確実視されている。津市も制度改正で新事業を立ち上げ、地域のサービスの充実を図りながら保険料上昇の抑制もねらう。高齢者の生活を直撃する大きな問題だが、保険料上昇の抑制と共にサービスの質の維持も課題となる。

 

65歳以上(第1号)の介護保険料は3年ごとに運用する自治体による保険料の見直しが行われており、第6期(平成27~29年)に当たる今期の基準額は全国平均で5514円と、5期の月額平均4972円から10・9%上昇している。
津市では前期5690円から今期6167円と伸び率自体は8・4%と抑えたものの、元々全国平均と比べて高どまりだったため、年金収入に頼る高齢者の生活を更に圧迫する。
全国に目を広げると、保険料が月額2800円と最安の鹿児島県の三島村から最高額の奈良県の天川村8686円と大きな保険料格差が発生しているが、一概に安ければ良いと言えないのがこの問題の難しさ。極端に保険料が安い自治体では、介護施設の不足からサービスが受けられず、結果として支出が抑えられ、保険料が安くなっているというケースがあるからだ。
津市はというと、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を昨年9月1日現在で28施設1421床整備。入所待機者の解消のために、平成30年までに更に120床を増床する計画もある。その他の施設も比較的整備が進んでおり、それらが保険料に反映されているといえる。
保険料の抑制に最も有効な対策は、介護を受けない健康な高齢者を増やしたり重度化を防ぐことだ。そこで、津市では介護予防事業を行ってきたが、想定以上に参加者は少なく思うような成果につながらなかったという実情がある。
今年度の介護保険制度の改正に伴い、全国の自治体は要支援者に対する予防給付を廃止し、各自治体による独自施策への移行を求められる。津市もその流れの中で新たな対策を打ち出している。これまで要支援者に対する予防給付は法で定められた全国一律の人員基準のもとに運営されている訪問介護や通所介護などのサービスを提供する形だったのが、自治体の裁量で地域の実情にあった多様な事業を展開できる。
津市では、現行の訪問介護と通所介護に相当するサービス、現行基準を緩和したサービス、住民主体の支援等の多様なサービスの実施を掲げ、介護事業者による実務者会議と、誰もが参加できる意見交換会を経て、平成29年4月から「介護予防・日常生活支援総合事業」のスタートをめざす。
改正後は、市町村の判断でボランティアやNPOなども事業に参加できるようになるため、地域に根付いた住民サロンやコミュニティの活用により効果的かつ安価な介護予防サービスの展開も期待しているが、市内で地域間格差が生まれる可能性もあり、慎重かつ柔軟な対策が必要となる。
今後、団塊の世代の高齢化に伴い、加速度的に保険料が上昇していく試算が出ている。新たなサービスの財源の構成はこれまでと同じであるため、サービスの充実と、保険料上昇を抑えることの両立は決して容易とはいえない課題だ。津市にはこれまで以上に、地域の声に即した積極的な取り組みが求められる。