旧津市久居庁舎=津市久居東鷹跡町=を取り壊した場所に建設し、平成31年度の供用開始が予定されている『(仮称)津市久居ホール』。昨年8月から今年3月にかけて、各分野の専門家たちによる全7回の有識者委員会が開かれ、「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(劇場法)を踏まえた多角的な検討がなされてきた。そこで導き出されている方向性は日常から市民が集い、文化の担い手を育む先進的なホールの姿だ。

 

このホールの整備は、津市の副都市核と位置付けられている久居駅周辺地区都市整備再生事業の大きな柱の一つ。今年初めよりポルタひさいに機能を移し、役割を終えた旧久居庁舎を取り壊して建設。平成31年の供用開始をめざしている。
その整備基本計画で、大きなウェイトを占めるのが平成24年施行の劇場法との整合性だ。この法律では、文化ホールなどに対して、従来の貸館中心の業務から脱却し音楽・演劇・舞踏・伝統芸能といった実演芸術の振興や担い手の育成を図るために積極的な取り組みを行うことを求めている。
同法を設計段階から折り込んだ施設整備は、全国的にも稀有で、従来のホールとは一線を画す施設にする必要があるだけに津市でも慎重に準備を進めてきた。
昨年8月から今年3月にかけて、三重大学大学院工学研究科の大月淳准教授を会長に、先進的な施設運営を行っている公共ホールの館長らを迎えた有識者委員会を全7回実施。ホール整備の基本計画に基づきながら、様々な事例を踏まえた濃密で多角的な検討がなされており、その成果を意見書として今年3月に津市へ提出している。
その意見書で導き出されたホールの方向性を簡単に説明すると、公演のある時間だけでなく、日常より多くの人々が集い、地域の文化の担い手達を育くんでいく機能を持った施設。
施設を構成する主たる機能を説明すると…①主ホールは座席数600~700席を想定。舞台の大きさは奥行15m・幅37mで演劇・舞踊系を意識した造りにするが、音楽にも高いレベルで対応できるものとする。それに併設するスタジオは実演芸術の練習から主ホールのリハーサルや小規模な公演、主ホールに入りきれない人の収容などもできる多目的な機能を備える。200㎡を想定。
②専用展示ギャラリーは絵画など視覚芸術の展示が主目的。200㎡を想定しているが、スタジオや他室を合わせて、1000㎡の展示スペースを確保する。
③ホール運営を司る事務室は、久居総合支所のサテライト機能の併設が基本計画に盛り込まれているが、管理運営体制の違いや利用想定人数も少ないため、併設に当たり、更に慎重な検討と調整を求めている。
その他にも、各種音楽練習やリハーサルにも対応可能で、CD制作も可能な録音スタジオにも使えるバンド練習室(音楽練習室)。誰もが気軽に立ち寄れるオープンスペースに障害者を雇用するカフェや情報ラウンジ設置を提案している。
平成31年度に向けた今後のスケジュールは、6月議会に提出した補正予算が可決されれば、8月よりプロポーザル方式で建設業者を選び、基本設計に入る。同時にソフト面の核となる管理運営計画も策定。来年度の実施設計へと繋げる。
今回の有識者たちの意見は、運営方針にまで踏み込んでおり、既存ホールとの役割の違いをより明確にしている。即ち、久居のみに捉われないより広義の〝地域〟に文化的な影響を与えまちづくりや地域活性化につなげていく姿勢だ。
津市によると、市民への説明会でこの方針は好感触を得られたというが、それを実現するには然るべき人的資源と予算の投入など、求められる水準も高い。今後の取組にも期待したい。