「近頃ショッピングが楽しくなくてね」と友人が言う。以前は、店に並ぶさまざまな物を見て歩くだけでも楽しめたのにと。
他界した親の家を片付けているうちに、だんだん心境が変化したという。大量に買い込まれた日用品。箱に入ったままの贈答品。そして、買ったことさえ忘れたのか、同じような道具類。それらを整理するうちに、物を増やしてはいけないとつくづく感じたそうだ。
断捨離を心がけている私も、この間からコーヒーカップやガラス器を捨てている。きれいだけれど、一年に数回しか登場しないうつわ類。捨てたところで、不自由はない。もう二度と同じような物は買うまいと思う。そして他の物も買えなくなった。
どうも、物を処分すると物欲がなくなるようである。家に物が少なくなるから、また買えそうだが、いらないのである。持てる者はますます持ち、持たざる者はますます乏しくなる。
店に並ぶ品々を前に、生きて行くのに必要か否かと問えば、必要でない物の方が多い。不必要な物を持つことをゆとりという考え方もあるが、読書や芸術鑑賞など、物を持たなくとも心豊かに過ごす手段も存在する。
友人は今の状態を「解脱」と表現した。物欲という煩悩から解放され、自由の境地に至ったわけだ。「解脱した」が私の周囲での流行語である。
(舞)