津市は平成24年度より、自治会が設置・維持管理する防犯灯のLED型への交換・新設に伴う補助事業を行っているが、加速するニーズに応えるべく、今年度は予算を大幅に拡大。昨年度まであった制限を撤廃し、自治会からの要望全てに対応するため、今議会に議案提出中の補正予算を含めると1億円超の事業費を計上している。防犯灯の維持管理費は自治会の大きな負担になっていたため、意義の大きい施策になりそうだ。

 

市内に設置されているLED型防犯灯

市内に設置されているLED型防犯灯

津市内には自治会が設置・維持管理している防犯灯が約2万8400基がある。津市は平成24年度よりLED防犯灯の設置補助金(補助率3分の2、上限2万円)を創設。自治会に希望を募ってきたが、毎年予算額を大きく上回る申請が殺到。そこで同年度の930万円から昨年度の3025万円まで毎年予算を引き上げ、今までに約5500基の補助を行った。しかし、予算の関係で申請は各自治会が維持管理している総数の1割までに制限。10年かけてLED化を進める計画を立てていたが、自治会関係者からペースが遅すぎると不満の声が上がっていた。
ここまで、自治会が切実に声を上げてきた理由は、防犯灯の維持管理にかかる費用が大きな負担となっているため。電力会社は公共性を考慮して防犯灯専用料金を設けてはいるものの、少子高齢化で加入者が減っている自治会の台所事情は深刻だ。従来型の蛍光灯タイプと比較すると、LED防犯灯の電気料金は1基当たり年間1500円程度と約半額。寿命も約7倍の約6万時間あるので、メンテナンスにかかる費用も圧縮できる。更に、ここ数年で防犯灯の価格も大きく下がったため、一気に導入に踏み切りたい自治会が出てきたという構図だ。
津市も、このような状態を重く見ており、犯罪の抑止に大きな力を発揮している重要な社会インフラである防犯灯を維持管理してもらっている自治会の要望にできる限り応えることを決断。昨年度の段階で、自治会に対して、聞き取りを実施。そこで出た自治会側からの要望に合わせる形で、約5600基分の9451万円を補助事業費として当初予算に計上。更に、今年度に入ってから出た要望にも対応するため、開催中の今期議会に900基分672万円の補正予算案を提出している。財源は、防犯灯のLED化による温室効果ガス排出削減に着目し、環境対策基金を活用する。これによって、平成27年度末で市内防犯灯のLED化率は41・8%になる見込み。
昨年までとは大きく違う市の本腰を入れた対応に自治会関係者からは喜びの声が上がっている。ただ、財源である同基金は残り1億4千万円ほどしかなく、来年も同様の規模で補助を行えば、ほぼ枯渇してしまう。これに対して、今議会で中村勝春市議から質問があり、前葉泰幸市長は「もう一度、防犯灯にどこまでお金を使えるのか、しっかりと議論をした上で一般財源で対応することとなる」と支援策の継続に前向きな姿勢を見せている。
そもそも防犯灯は、犯罪抑止や交通事故防止など、多面的な役割を持つ重要な社会インフラである。人口減少に伴い、自治会の財政が厳しくなっていく中、その支出の大きなウェイトを占める防犯灯の維持管理の支援は行政としての責務であると言っても過言ではない。今後も時代の流れに合わせた津市の積極的な支援策を期待したい。