9月4日、男女共同参画センター「フレンテみえ」で、伊勢志摩サミットのキックオフとなる「三重県バリアフリー観光推進大会」が開かれた。会場では、鈴木三重県知事、作家・東京都教育委員の乙武洋匡さん、伊勢志摩バリアフリーツアーセンター理事長の中村理事長らがパネルで、「日本一のバリアフリー観光が三重の未来をつくる。そのためには、おもてなしの心が大切」とトーク。今後は個人を基準として、バリアフリー観光が大きなうねりになっていくと解説した。
伊勢志摩サミットは、三重県の良さを国内外に発信して消費を高めるばかりか、「もてなし」を高める大きなチャンスだ。
乙武さんは大会出席のため、名古屋から津市の会場、その後に予定している講演も精力的にこなし、長時間、私の福祉タクシーに乗車してもらった。この時、意外なことから、介助をするドライバーの私と乙武さんの間に和みがあった。
私は、同氏が大学在学中に出版した「五体不満足」を読んだことはあるが、会話は初めて。こちらが挨拶すると「はじめまして。今日は、よろしくお願いします。昇降リフトの操作をしてもらえば、あとは自分でやります」と言うや否や、ひょいと隣の座席に乗り換えた。慣れもあろうが、我々福祉タクシーの乗務員も特別に介助をすることはない。走行に専念してもらおうという気持ちがこちらにも伝わった。移動中も、氏の活動のことなどで気軽な話ができ、安全運転で目的地へ移動できた。これは、もてなしの〝キャッチボール〟。福祉タクシーは「おもてなし」、「バリアフリー観光」が同時にできる。
そこで、来年開催されるサミットを大きなチャンスにして、三重県で「全国福祉タクシーサミット」を開いてはどうだろうか。
これは国内の福祉、介護タクシー、民間救急などの事業者が集うもの。各車の特徴もわかってもらえるし、採択した案件を全国に発信できる。往復も、お客様が事業者のタクシーに乗ってバリアフリー観光をしていただければ三重県、サミットをアピールできるし、地場産直品の消費も上がるのではないだろうか。
福祉タクシーは純然たるタクシー事業だが、全国的に不足している。交通弱者が均等に利用できる環境には至っていない。「福祉タクシーサミット」は利用者と地元の理解を深め、決議次第では救急車の適性利用なども強調できよう。
乙武さんが最終の日程を終えて帰路についた時、鈴木知事から私に「今日は、安全運転でありがとう」と、声をかけてもらった。
おもてなしは、これからの三重のビジネスを大きく変えるだろう。(日本福祉タクシー協会所属 はあと福祉タクシー代表)