津市美杉町の過疎対策に取り組むNPO法人『コルチカムの里』=宮崎尚義理事長(76、津市渋見町)、会員11名・会友7名=がこのほど設立され、明後日3日、同町奥津のJR名松線・伊勢奥津駅前にあるメインオフィスでオープニングパーティが開かれる。今後、このオフィスや近くの畑で、写真と地図で成る「伊勢本街道絵巻」による観光案内をはじめ、音楽・芸術・農業など多分野にわたる活動を展開していく。

 

様々な作家の絵画などを展示するギャラリー

様々な作家の絵画などを展示するギャラリー

宮崎さん(右)と会員の富田和廣さん…伊勢本街道絵巻の前で

宮崎さん(右)と会員の富田和廣さん…伊勢本街道絵巻の前で

過疎化が進む津市美杉町は人口4890人、高齢化率は56%(8月31日現在)に上る。また松阪市と同町奥津を結ぶJR名松線が来年3月に全線復旧予定だが、同線は沿線の少子高齢化の影響もあり利用者が少なく、活性化には他地域からの誘客が課題となっている。
一方、宮崎さんは津高校出身で金沢美大を卒業後、日本やアルゼンチンで計8年間ほど陶器デザインの仕事を経験した。その後、帰国してファッションビジネスに経営者として携わり、70歳のとき引退。
元々旅行が好きで、引退後も県内各地を車でまわっていたが、約5年前に奥津にある伊勢本街道奥津宿ののれん街を訪れてその魅力に惹きつけられ、以来、毎日のように通って写真撮影を行い地元住民とも交流した。そして、このことなどを機に約2年前、美杉町の過疎対策に取り組もうと任意団体である「NPOベルノアール」を発足。そして今回、取り組みの強化を目指し『NPO法人コルチカムの里』を設立した。
会員は、津市・鈴鹿市在住で様々な職業の30代~70代の11名。そしてメインオフィスは、昔の木造校舎のような趣きがある2階建ての空き建物を借り、改修などにより再生させたもの。
床面積300坪の1階には、「伊勢本街道絵巻」を掲示し名松線の利用客などを対象に観光案内を行う部屋や、一流作家から地元の児童まで様々な人の作品を展示するギャラリー、地元の団体や名古屋フィルのメンバーも出演する音楽ステージもある。将来的には、オフィス内に食事ができるサロンも開きたいという。
さらに近くに地元住民から借りている2カ所・計約998坪の畑では、会員で三重大学大学院生物資源学科研究科准教授の鬼頭孝冶さんらが、地域の農業に深刻な打撃を与えている獣害の有効な対策を研究する。またここに、一般の人が農業体験をする場や、名松線の車窓から見て楽しんでもらえるよう花畑を作ることも検討している。
宮崎さんは「現在、ウォーキング案内本の伊勢本街道絵巻も制作中です。人が集まり楽しめるスペースを作りたい。過疎地だからこそやれることが、きっとあると思う。これからこのような活動に取り組む人が増えて、広がっていけば」と話している。
豊かな自然や歴史など、多くの地域資源に恵まれた美杉町。同団体の活動により、その魅力がより一層広まることを期待したい。
オープニングパーティは3日10時~15時開催。内容は──▼音楽演奏=10時半~。「庄屋DE楽団」などが出演予定▼絵画=大泉佳広氏の作品展▼伊勢本街道絵巻=写真、イラスト(美杉町中心)▼バザール=食品や農産物などの販売。
問い合わせは宮崎さん☎090・8182・0813へ。