仏壇の花を整えながら、「ハクシコウコウセキ」とつぶやく。これは花色の順。白紫黄紅赤。白菊を真中に高くして、リンドウを次に、黄色い菊を少し下げて、その下に濃い紅と赤の小菊で、全体をひし形に整える。
たいていはそれほど豪華に揃えずに、白黄赤の順でとりあえずひし形に。その花色順をいつ覚えたのか記憶にないし、また正しいか否か確かめてもいないが、花を手に取ると、毎回ハクシコウコウセキが頭に浮かぶ。
味噌汁を作る時の味噌の量はカレースプーン一杯で一人分。これも毎回思い出す。覚えたのはたぶん高校生の頃で、それから何千回も味噌汁を作っているから、何千回も思い出しているはずだ。
何かする時に、必ず関連する記憶が浮き上がってくる。いったい人の脳の中はどうなっているのだろう。花色の順や味噌の量など、役に立つ知識ならば問題ないが、失敗したこと、恥ずかしかったことが浮かび上がってくることもある。もうずいぶん経っていて、忘れ去りたいものが。
それでいて、知っているはずの情報が出てこないことがある。しっかり覚えたはずの名前がどこにも見当たらなくて、「ほら、何とかいう、前に行ったレストラン」のような会話をしている。
要するに脳内の検索に難があるのだ。余計な検索結果を無視し、必要な記憶だけを取り出す検索能力がほしいと切に思う。                  (舞)