3日、津市高野尾町の㈱赤塚植物園と同社の栽培見本農場「ヒーサーの森」で『第15回地域が応援するキャリアアップセミナー』が開催された。県内の中高生らが、COの濃度測定をテーマに台湾の学生とネット中継で会議したり、豊かな自然の中で植生観察や昆虫や土壌動物の観察などを実施。参加者たちは環境という世界規模の課題を通じた国際交流や、自然を生かした里山ビジネスの可能性を探るなど最先端の環境学習を体験した。

 

落ち葉や土に潜む生物を観察する参加者たち

落ち葉や土に潜む生物を観察する参加者たち

同セミナーは、地域の未来を担う中高生に、進学などで都会に出たとしても、将来的には三重県や津市で活躍してほしいという願いを込めて三重大学を中心とした産学連携で開催してきた。主催=同セミナー実行委員会。共催=三重大学、名古屋産業大学、三重県教育委員会、㈱赤塚植物園。
今回は三重県内の中学4校と高校7校の生徒と、チームリーダーとして三重大と名古屋産業大学の学生ら計76名が参加した。
冒頭の基調講演では、三重大学の地域戦略センター長で副学長でもある西村訓弘教授が南北格差など、三重県が抱える問題を指摘するとともに、三重県が進める台湾との経済や観光での連携の現状を解説。その上で、中京圏にも関西圏にも接し、工業分野で高い技術を持った企業や有名な食品企業、一次産業分野の生産力など、三重県の力を客観的に評価。県内のGDPは2010年度で7兆3681億円と国家レベルの経済規模を持っている点に着目した上で「三重県からでも世界と付き合いできるし、世界と対等に戦える」と参加者を激励。江戸時代の幕藩制のように、地方が自らの能力を発揮しながら世界でも活躍する「グローカル」をめざすべきと語った。
続いて、名古屋産業大学の協力でCO濃度の測定に取り組んでいる久居農林高校の生徒と台湾の大同高校の生徒がインターネットを通じて「環境テレビ会議」を実施。それぞれが研究の成果を発表しながら、文化や言語を超えた『環境』という共通課題で国際的な交流の可能性を見せた。
その後、参加者たちは、「高野尾地区活性化プロジェクト」の核施設として建設が進んでいる「花と緑と水の里」とも連結する栽培見本農場「ヒーサーの森」へ移動。8haにも及ぶ広大な敷地の中で、グループ別に分かれ、各分野の専門家の引率で植生や昆虫や土壌動物の観察、CO濃度の測定などを行った。
最後に各グループが、同農場の自然環境を生かしたビジネスプランをまとめて発表を行った。
環境は世界規模の課題でありながら、学校の授業だけだけでは子供たちに十分な教育を施すことができていないのが現状。同セミナーは、文科省と日本ユネスコ委員会が推進する持続可能な開発のための教育「ESD」をいち早く実践している全国的にも先進事例といえる。子供たちが国際的な課題を知り、県内から世界を舞台に活躍する足掛かりとなるという意味でも非常に意義深い内容だった。