総合病院の廊下には人がいっぱいいた。午前の診療が始まってしばらくの頃で、私は検査を済ませて診療科に着いたところだった。病院には病気の人があふれている。
廊下の端にテーブルと椅子があり、後期高齢者と見える女性が一人座っていた。見るともなしに見ていると、女性はバッグから取り出した包みを開いた。コンビニサイズほどのノリを巻いたおにぎりが三個。女性はおにぎりを食べ始めた。
たぶん絶食して検査を受け、その後ようやくの朝食を摂っていると思われた。女性は小柄で痩せていて、おにぎり三個が食べられるかと気になった。
失礼ながらもちらちらと眺めていると、女性は勢いよくおにぎりを口に運び、気持ちよいほどにおにぎりが減っていく。お茶を飲んでおしまいになった時には、あっぱれと声をかけたくなった。
私も絶食して検査に臨んだのであったが、検査後にペットボトルの水を飲んだだけ。三食を大事にし、真剣に食べるべきだというのが持論であったのに、これではいけないと私は売店へ向かったのである。
考えるに、食べようとする意欲は生きる意欲である。人生に向き合う迫力を表す。あの女性はたぶんすぐに病院と縁が切れるだろう。そしてきっと元気に長生きするだろう。見習いたい姿勢だと思った。
(舞)