寝ぼけていたわけではない。でもやってしまった。寝る前に歯磨きをしようと洗面所で、歯ブラシに歯磨きを付けて口に入れたとたんに気が付いた。「これは!」歯磨きではなくて、洗顔フォームを歯ブラシに付けていた。
珍しい失敗である。それでも落ち込んだ。だからこそ落ち込んだ。歯磨きと洗顔フォームを取り違えるなんて、私は大丈夫なのか?
同じような失敗が、毎日アップされているサイトがある。コピーライター糸井重里が主宰する「ほぼ日刊イトイ新聞」の「言いまつがい」というコーナーである。言い間違い、読み間違い、勘違いやミスの数々が投稿されている。
『静かなるドン』を『静かなうどん』だと思ってレンタルショップで探した話。駅の改札機にお菓子でタッチした話。「平将門」を「へいしょうもん」と読んだ話。空港の海外出発ロビーで娘のパスポートを持ってきたことに気付いた話。もちろん洗顔フォームで歯を磨いた話もあった。
とにかく人は毎日どこかで何かを間違っているらしい。他人の失敗はかわいい。ああ、私もそんなことがあったと共感できると楽しい。
人は思いがけない間違いをするものだ。間違うのは人間らしいと言うべきだ。認知機能に不安を持つ必要はない。そう自分自身にたたみかけながら、実はまだ落ち込んでいる。      (舞)