車で通った道路脇に、「みかん詰め放題」の文字があった。ちょうどみかんも切れているし、スーパーじゃない場所で買うのも面白いかと立ち寄った。
「詰め放題五百円」と書かれた平台には、小ぶりのみかんが山と積まれていた。用意された袋はいかにも小さいが、上手に詰めればそこそこ入るだろう。ぎゅうぎゅう詰めてもそうでなくとも、違いは数個と思われた。
それでも自ずと張り切ってしまう。袋を伸ばすという卑怯な手段は取らない。いかに効率よく詰めるかと考える。やみくもに詰めてはいけない。同じ向きに並べるか、それとも隙間を狙って満たしていくか、いろいろ考える。
みかんを手に取ると硬さの違いにも気付いた。美味しさや新鮮さは、みかんの硬度や形状に表れているだろうか。表面の艶や傷は味に関係があるだろうか。いろいろ考えてみることが楽しい。
こういうふうに観察したり、仮説を立てたり、検証したりするのは、まさしく科学的探求の手法である。重ねて言うが、一個二個にこだわっているのではない。探求が面白いのだ。
傍では夫が、「いい加減にしろよ」という目で眺めている。きっと「ケチくさい」などと思っているのだろう。長く連れ添ってもお互いへの理解が足りないのが、夫婦である。     (舞)