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倒壊寸前の危険な空き家の持ち主に対して市町村が撤去の勧告や命令などを出せる「空き家対策特別措置法」が今年5月に全面施行されたが、津市も市内の空き家の実態をまとめた「空き家台帳」の作成などの取り組みを進めている。少子高齢化に伴い、空き家問題は今後もますます加速してくことは確実で、危険な空き家を迅速に撤去できるような体制と共に、まだ使える空き家の利活用促進など多面的な施策も必須となる。
総務省の「土地統計調査」で最新の平成25年度版によると、全国の総住宅数6063万戸。その内、空き家数は820万戸と過去最高の13・5%。前回調査と比べると63万戸も増加。
それに伴い、全国各地で「空き家問題」が発生。管理されていない空き家の庭に雑草が繁茂したり、虫や悪臭の発生源になるといった衛生面や景観上の問題。不審者が出入りするなど、防犯上の問題。そして、最も深刻なのは、倒壊寸前の空き家が近隣住民の命を脅かしているケースが挙げられている。しかし、空き家は個人資産でもあるため、対応が難しく、全国の市町村によって取り組みに違いが生じていた。
そのような背景から今年5月に全面施行されたのが空き家対策特措法。これによって、市町村が危険な状態にある空き家を「特定空き家」として認定でき、持ち主が撤去・解体に応じない場合は行政代執行を行うことができることなどを定めている。また、認定されると住宅地に対する固定資産税の優遇措置も外れる。
津市でも、この法律に基づく取り組みが進められており、現在市内の空き家の実態をまとめた「空き家台帳」を作成中。この台帳では、空き家を綺麗な状態のA、少しリフォームすれば使えるB、危険な状態のCと3段階で評価。住民から相談があった際により的確な対応を行うために使う。
津市では、空き家に関する市民からの相談を受けるのは、環境保全課もしくは最寄りの各総合支所。その後、担当職員が該当の空き家を確認。雑草や害虫などの対応は同課、建物の問題は建築指導課が担当する。
特措法施行後、固定資産税のデータで空き家の持ち主を割り出せるようになり、改善を求めるコンタクトをとりやすくなったという。今年も建物だけで60件余りの指導を実施。特定空き家の認定には、持ち主に指導・勧告・命令という段階を踏む必要があり、津市での認定はまだない。
ただ特措法に基づく空き家対策はあくまで〝対症療法〟に過ぎない。同時に、使える空き家の利活用と、空き家が放置されない仕組みづくりが必要となる。
前者は津市でも美杉町内の物件を田舎暮らし希望者に紹介する空き家情報バンク制度を実施中。近隣では伊賀市が県外からの移住者対象の空き家のリノベーション補助を行なっている。これらは人口増加にも繋げられる施策でもある。
後者は民間でも月額で空き家を定期的に見回り、危険個所の確認や草ぬきなどの管理をする事業者も出てきている。行政としては、遠隔地に住んでいて親の家を相続で受け継ぐことになった人にそういったサービスの利用を促すなど、空き家が適正管理されるようにすることも重要となる。
津市でも来年度より「空き家等対策計画」の策定に入る。空き家対策の先進事例でも官民の連携が少なくない。危険な空き家の撤去判断など行政しかできない対応と民間の力を活用した方が良い部分を見極めた上で、柔軟な施策を展開することが求められている。
2015年12月3日 AM 5:00
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